オランダが3位決定戦でブラジルに3―0で快勝し、大会を終えた。準決勝でもドイツに1―7と大敗したブラジルは、1974年西ドイツ大会2次リーグ最終戦でオランダに0―2、同3位決定戦でポーランドに0―1で敗れて以来のW杯における連敗となった。
オランダの縦への鋭い攻めに、40年前にテレビを通じて日本で見た同カードを思い出した。生放送ではないので、結果は分かっている。しかも、前半と後半に分けて放送するという現在ではおよそ考えられない形式だった。それでも、オランダが誇るスーパースター・クライフを中心とするスピード豊かな攻め、ピンポイントで正確なパスを合わせる得点に息をのんだものだ。
今回も守備から攻撃への素早く正確な切り替えで、ブラジルを後手に回らせた。球を奪うやファンペルシーやロッベンといった前線の選手に収めて、攻撃のスイッチを入れる。そこから、オランダが見せるグラウンダーでのスムーズなパス交換、後方からも次々と選手が飛び出す厚いフォローの前に、ドイツ戦でもポジションからつり出された感のあったブラジル守備陣は、チェックにいく余裕さえ与えてもらえなかった。こうした組織プレーに関しては、オランダに一日の長がある。素早い攻守の切り替えとポジションにとらわれない全員攻撃・全員守備で70年代に革命をもたらしたサッカー哲学が、形を変えながら受け継がれているのを感じた。
攻撃陣が注目されがちだが、3位入賞の立役者の一人としてDFフラールを挙げたい。延長戦を含む120分を0―0と譲らなかった準決勝のアルゼンチン戦ではPK戦1人目のキッカーを務めて失敗したものの、南米の強豪2国を無得点に抑えたこの2試合を含めて、チームへの貢献度は高い。ゴール前のクリアや左右のカバリング、インターセプトから攻撃の起点となるなど奮闘し、大会前は不安視された最終ラインを引き締めた。
今大会が終了すると、欧州勢は2016年にフランスで開催される欧州選手権が目標となる。オランダはファンハール監督が勇退。代わって1998年フランス大会でオランダ、2002年日韓大会で韓国を共に4位に導いたヒディンク監督が就任する予定。自信をつけた守備陣と、今大会のレギュラーの多くが30代と高齢化が心配される攻撃陣の間で、オランダらしいサッカーがどのような形で継承されていくかに注目したい。
石川あきらのプロフィル
サッカージャーナリスト。1956年、東京都生まれ。慶応大学卒。「サッカーダイジェスト」の編集に携わり、編集長を務める。ワールドカップは1982年スペイン大会から取材を続け今回が9回目。
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