極論をいえば、「考えない」ことだろう。
他力本願で1リーグ突破の可能性があるとはいえ、それは日本がコロンビアに勝利を収めることが大前提。可能性が低いとはいえ、希望をつなぐために果たさなければならないタスクだ。
クイアバでの前日練習を終え、ここ2戦、まったく持ち味を発揮していない岡崎慎司はいった。「自分たちのサッカーとか、W杯が4年に一度というのを意識し過ぎたのかも」と。
そもそも頭で考えて、そのプレーをピッチで表現できるのなら、それこそ一部の選手たちが公言してきた「世界一」さえ夢ではない。しかし、サッカーはそんなに単純ではない。
一方で、サッカーの「目的」は単純だ。相手からゴールを奪い、相手にゴールを許さない。そのための手段はさまざまあるが、自分たちの最も得意な持ち味を発揮するしかない。
考えることの大切さ。それを否定するわけではない。チームのコンセプトを理解できない選手は、いくら個人技にたけていても、現代サッカーでは機能しない。チーム作りを行う上では、選手たちにもかなりの考える力と理解力が必要とされるのだ。
ただ、4年近くの歳月をかけて熟成させてきたザッケローニ監督の日本代表に、いまさら新たに考えることを求めることが必要だろうか。このチームは、時として一流国を相手に素晴らしいプレーを披露してきた。その場面、場面を振り返ると、選手たちは考えるのではなく、いままで身につけてきたスキルを自然体で発揮してきた。少なくとも、現在の日本の選手たちのレベルは、そこまで達しているはずだ。
国際サッカー連盟(FIFA)のプレスオフィサー(報道担当)としてクイアバを担当する岩元里奈さんによると、この日の気温は37度に達したという。過酷な条件だ。それでも選手たちは戦わなければいけない。日本代表は国民の期待を背負った特別なチームだ。思考が停止するほど、精魂つきるまで戦い抜く。それを果たせたとき、彼らのいう「自分たちのサッカー」が、きっと日本国民の前に姿を現すはずだ。
岩崎龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル
サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。
※無断転載を禁じます。 当ホームページに掲載の記事、写真等の著作権は大分合同新聞社または、情報提供した各新聞社に帰属します。