アルゼンチンが2-1で初出場のボスニア・ヘルツェゴビナを振り切った。エースのメッシは前半3分のFKが相手オウンゴールによる先制点につながり、後半20分にはドリブル突破からチームの2点目をマークする活躍を見せた。
ボスニア・ヘルツェゴビナのスシッチ監督は、「メッシに特定のマーク役をつけることはない」と語っていた。しかし、メッシに球が渡れば当然、厳しくチェックする。特に前半はアグエロと2トップのような形のため、相手DFを背負ってどこか窮屈そうな印象。そこからアクションを起こそうとする瞬間を狙われ、球を奪われる場面も目立った。さらにその連鎖か、パスにも精彩を欠いた。
ところが、イグアインをトップで起用し、2列目に下がった後半は一転、躍動感があふれた。前線からのリターンを、ゴールに向いて受けるようになり、動きに加速がついた。イグアインとのワンツーパスからスピードに乗って決めた得点は、まさにそのような形。ボスニア・ヘルツェゴビナ守備陣はなすすべなく、味方同士が衝突するなど混乱をきたした。
W杯の得点は2006年ドイツ大会以来で、出場した8試合ぶりとなる。初得点を記録したのは、ボスニア・ヘルツェゴビナと同じ旧ユーゴスラビア系のセルビア・モンテネグロだった。試合後の記者会見では、サベラ監督の口から何度も「メッシは世界最高の選手」というフレーズが出た。開幕戦でのネイマール(ブラジル)に続き、世界が注目するスター選手の活躍で大会はさらに盛り上ってほしい。
アルゼンチンは一方で、予想された守備の不安が消えたわけではないだろう。シュートは11本を上回る16本をボスニア・ヘルツェゴビナに許し、そのうち11本をゴール枠内に飛ばされた。不用意なパスミスからシュートに持ち込まれ、相手のエースストライカー、ジェコとの競り合いであわてるシーンもあった。
「初戦は難しいもの」(サベラ監督)にせよ、85分に1本のパスでイビシェビッチに簡単に得点されたのも反省材料だろう。同監督は「さらに改善が必要。その一部は私に関係すること」と語り、選手起用、フォーメーションなどを再考する可能性がありそうだ。
石川あきらのプロフィル
サッカージャーナリスト。1956年、東京都生まれ。慶応大学卒。「サッカーダイジェスト」の編集に携わり、編集長を務める。ワールドカップは1982年スペイン大会から取材を続け今回が9回目。
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