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【W杯コラム】満足な引き分け

[2014年06月22日 12:04]

 前評判の高い役者が、仕事をする。そのような試合は観る者を満足させる。G組のドイツ対ガーナは、2―2の引き分けに終わったとはいえ、そんな試合だったのではないだろうか。

 優勝候補と誰もが認めるドイツ。それを苦しめたのが、初戦の米国戦を落としているガーナだった。

 相対的に個人プレーに走りやすく、集団での意識に欠けるといわれるアフリカ勢。しかし、ガーナは4年前の南アフリカ大会でも見せたように、洗練された組織力を持つチームだ。今大会も「個の力に頼る」のではなく、集団のなかで効果的に「個を生かす」サッカーを展開している。

 南ア大会では準々決勝のウルグアイ戦で延長後半終了間際にPKを獲得。アフリカ勢初のベスト4は確実という場面でエースのジャンがこれを失敗。PK戦で敗れるという悪夢のような結果に終わった。

 その汚名返上でもないだろう。しかし、ドイツ戦で見せたジャンのゴールは冷静の一語に尽きた。1―1で迎えた後半18分、中盤のムンタリがボールをカット。そのスルーパスに右サイドを抜け出し、名GKノイアーを難なく破った。簡単そうに見えるが、考える間のあるシュートは雑念が入りやすい。ここで確実に決めるのが、点取り屋なのだろう。

 ところがドイツにも役者がいた。後半24分から投入されたクローゼだ。過去3回のW杯で積み上げてきた得点は14。決して独力でゴールできる選手ではないが、とにかくピンポイントで合わせる生粋の点取り職人。そのクローゼが2―2の同点ゴールを決めたのが、自身のこの試合でのファーストタッチ。後半26分、クロースの左CKからヘベデスがコースを変えたボールをワンタッチでゴールにプッシュ。ブラジルのロナウドが持つW杯通算最多得点の15に並んだ。

 ガーナは2戦を消化して1分け1敗と、結果的には日本と同じ立場に立たされた。ただ、強豪ドイツであっても勇敢に真っ向勝負を挑み、対等に戦い抜いた。その姿勢は見習わなければいけないだろう。たとえ結果がどうであれ、勇敢に戦うことなくして観る人々が感動することなどないのだ。

 岩崎龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル
 サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。

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