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【W杯コラム】救世主は現れるか

[2014年07月07日 14:50]

 準々決勝から準決勝までは中二日ある。この間を利用してサンパウロ州サントス市に先月オープンした「ペレ博物館」を訪れた。サッカーの「王様」と呼ばれる偉大な選手の足跡を、ユニホームやシューズ、トロフィー類などの品々、写真、映像でたどっている。選手としては唯一となる3度のW杯制覇も、特別にコーナーを設けて紹介されていた。

 3度の優勝の中でも、17歳でW杯デビューを飾った1958年スウェーデン大会と円熟の境地を見せてタイトル獲得に導いた70年メキシコ大会の貢献は計り知れない。62年チリ大会は1次リーグ第2戦で負傷したため、残り試合に出場できなかった。すでに世界的に名声を高めていたエースの離脱は、今大会のFWネイマールと同じく、ブラジルにとってショッキングな出来事だったろう。

 だが、当時のチームはペレ以外にも58年大会の優勝経験者が多く、その後の試合でガリンシャ、ババが各4得点。ペレの穴を埋める形で出場した新鋭のアマリウドも3点を挙げる活躍で、連覇に大きな役割を果たした。

 今回も救世主は現れるのか。残念ながら、ここまでの戦いぶりを見る限り、期待はできそうにない。ドイツの手堅さを考えると、1点を奪うのも至難の業となるだろう。さらに主将でセンターバックのチアゴシウバも警告累積で出場停止とあっては、後方をおろそかにすることもできない。決勝トーナメント1回戦のチリ戦、準々決勝のコロンビア戦と同様、得点はセットプレーへの依存度が高くなりそうだ。

 ネイマールの代役候補とされるMFビリアンは、エースの負傷後「われわれはさらに強くなった。(優勝という)夢を追い続けることができる」と強気に話すも、前途は厳しい。2012年11月の就任後、初めてネイマール抜きで戦うスコラリ監督が、どのような策を講じてドイツ戦に臨むのか注目される。

 ブラジルとドイツがW杯で戦ったのは過去に1度、日韓共催の02年大会決勝だ。この一戦はドイツが司令塔バラックを出場停止で欠き、スコラリ監督率いるブラジルに0―2で敗れた。MFシュバインシュタイガーは、ネイマール負傷が「チーム(ブラジル)を結束させて、彼のためにもタイトルを取ろうとするだろう」と油断は怠らないものの、12年前の雪辱を果たす好機到来という思いも強いはずだ。

 石川あきらのプロフィル
 サッカージャーナリスト。1956年、東京都生まれ。慶応大学卒。「サッカーダイジェスト」の編集に携わり、編集長を務める。ワールドカップは1982年スペイン大会から取材を続け今回が9回目。

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