各組で3試合を戦うW杯。しかし、ある監督は「W杯はトーナメントなんだ」と表現したことがある。前回の南アフリカ大会で初戦を落として決勝トーナメントに進出したのは10カ国中わずかに1カ国。90パーセントの確率で1次リーグ敗退が決まったことを考えると、W杯初戦の持つ意味は、まさしくトーナメントの様相を呈している。
雨の降るレシフェで日本代表は、コートジボワールに1―2の逆転負けを喫した。期待が大きかっただけに、大きな落胆。その現実を客観的に見れば力負けである。
確かに勝つチャンスはあった。ただ、それは日本のチーム状態が万全の場合だ。残念ながらこの試合の日本は、万全とはほど遠い本来のパフォーマンス以下の出来だった。
「前半も後半も自分たちのやろうしているサッカーが、試合を通して表現できなかった」
キャプテンの長谷部誠が語ったように、本田圭佑の先制点こそあったものの、日本がこれまで強豪相手に好試合を演じたときのような小気味よいパスのつながるサッカーは最後まで見られなかった。
日本の最大の武器が、まったく機能しない。長友佑都と香川真司の左サイドのホットラインだ。ここでボールをキープできないと日本が主導権を握ることは難しい。それだけならまだしも、この日はその左サイドを破られての2失点。1点差の接戦に見えるものの、内容は一方的なものだった。
日本人選手も欧州の名門クラブに名を連ねるような時代が訪れた。だが、残念ながらこの日、途中出場し雰囲気を一変させたドログバのような威圧感を持つ選手は日本にはいない。だからこそ組織で戦わなければならなかったのだが。
あまりにも痛い初戦での敗戦。日本代表は後のない土壇場に追い込まれた。4年間積み上げてきたものを、世界の舞台でなにも披露することなくこのまま終わっていいのか。我々は残り10パーセントの可能性に日本サッカーの将来を託すしかない。
岩崎龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル
サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。
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