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【W杯コラム】小国が見せた驚き

[2014年06月21日 10:53]

 逆の意味で国民を驚かせた日本代表とは対照的に、コスタリカが世界中を驚かせている。人口約480万人の小国。スペイン語で「豊かな海岸」を意味する国名の通り、美しく豊かな自然と、世界的にも珍しい軍隊を持たないことで知られるこの中米の国は、過去にもW杯で旋風を巻き起こしてきた。

 初出場は1990年イタリア大会。1次リーグでブラジル、スコットランド、スウェーデンの強豪ひしめく組に入ったコスタリカは、ブラジルにこそ0―1と敗れたが、2勝して決勝トーナメントに進出。この大会で神がかり的な好セーブを見せたGKコネホは“マーベラス”(驚異的な)の形容詞つきで呼ばれるようになった。

 W杯出場は4回。2006年ドイツ大会こそ見せ場はなかったが、02年日韓大会では1次リーグでトルコと並ぶ勝ち点4。得失点差で敗退したとはいえ、優勝したブラジル、3位トルコとの同組で挙げたこの成績は誇れるものだった。

 今大会、戦前の予想では他チームの草刈り場になるのではないかと思われていた。組み込まれたD組はW杯優勝経験国が3カ国同居する、いわゆる「死の組」。ところがふたを開けてみると、堅い守備を基盤とした鋭いカウンターを武器に、初戦でウルグアイを3―1と撃破。イタリア戦でも相手より多くのチャンスを作り出し、左サイドのクロスからルイスが見事なヘディングで決勝点。1―0で勝利を収め、2連勝で早々と決勝トーナメント進出を決めた。

 大会直前の米国・タンパでの強化試合では日本に1―3の敗戦を喫していた。だが本大会での内容を見ると、コスタリカが日本戦をあくまでも調整の手段として有効に使ったということが分かる。このチームは、本番がW杯であることを、最も知ったチームだったのではないだろうか。一説には「日本戦はコンディションの底だった」という話が伝わってくるからだ。そして、そこから上げてきた。

 決して体格に恵まれた選手がそろっているわけではない。ただ全員の守備意識が高く、攻めに出たときの勝負度胸がいい。本来ならば日本がこのコスタリカのような驚きを、世界に与えるという触れ込みだったはずなのだが。

 岩崎龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル
 サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。

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