アルジェリアが韓国に4-2と快勝し、1次リーグ突破の期待を膨らませた。前半にパワフルな攻めで3点を奪って主導権を握り、後半は韓国に追い上げられたものの逃げ切った。W杯の勝利は初出場の1982年スペイン大会以来で、32年ぶりの歓喜となった。
その32年前の勝利を、私はスタンドの記者席で見た。スペイン北部のオビエドという町の、小さなサッカー専用競技場で行われたチリとの試合だった。アルジェリアは初戦でいきなり優勝候補の西ドイツを2-1で倒し、センセーションを巻き起こした。第2戦でオーストリアに0-2と敗れたが、チリ戦もスピーディーなパスワーク、テクニックを生かした攻撃サッカーを展開し、前半で3点のリード。後半に2点を許したものの3-2で逃げ切り、1次リーグを2勝1敗という見事な成績で終えた。
当時、アルジェリアサッカーの映像を見たこともなければ、情報さえ少なかった。今のようにインターネットなどなかった時代である(プレスセンターからファクスで原稿を送れるようになったのは、この大会から)。それだけに「アフリカにこんな素晴らしいチームがあるのか」と驚き、印象に残った。
なお、このチームで活躍した技巧派にマジェールというFWがいる。FCポルト(ポルトガル)で87年のトヨタカップに来日し、雪の降りしきる国立競技場で決勝点を挙げた選手、といえば思い出す方もいるだろう。付け加えれば、98年大会でフランスの初優勝に貢献したジダンも、アルジェリア移民の子であることが知られている。
しかし、82年のアルジェリアは2次リーグに進むことができなかった。チリ戦の翌日、共に1次リーグ突破に必要なスコアを知った西ドイツとオーストリアが「談合」ともいうべき試合を演じ、西ドイツが1-0の勝利。この3チームが同勝ち点となり、アルジェリアは得失点差で涙をのんだ。この反省から、次のメキシコ大会以降、同組内の1次リーグ最終戦は同日、同時刻に行われるようになった。
今大会のアルジェリアは、フェグリ、ベンタレブなどテクニックがある選手を擁する一方、前線からの厳しいプレス、球際の強さなど、タフさが目立つチーム。32年前とは異なる武骨さが今後、強豪相手にどこまで通じ、悲願の1次リーグ突破が成るかに注目したい。前日にアルゼンチンを苦しめたイラン同様、1次リーグから全力を尽くすアウトサイダーの頑張りを見るのもW杯の楽しみを一つだ。
石川あきらのプロフィル
サッカージャーナリスト。1956年、東京都生まれ。慶応大学卒。「サッカーダイジェスト」の編集に携わり、編集長を務める。ワールドカップは1982年スペイン大会から取材を続け今回が9回目。
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