正念場の戦いが明日に迫った。状況は現実的に見ればかなり厳しいと言わざるを得ない。W杯で初戦を落とすことの重大さを、いまさらながら噛み締めるしかない。
今回のW杯は5大会連続で出場している日本の総合力を試されるものになるだろう。振り返ると日本代表は1998年フランス大会、2006年ドイツ大会と初戦に敗れ、1次リーグで敗退している。初出場のフランス大会は出場そのものが目標だった感がある。ドイツ大会は02年日韓大会王者のブラジルとの第3戦に決勝トーナメント進出を懸ける展開。その望みは非現実的なものだった。
しかし、今回は違う。出場するだけではなく、本大会で勝つことを目的としてきたチームだ。メンバーの半数近くが欧州でプレーし、日頃からW杯に出場する一流の海外選手と接している。位負けはないはずだ。そこに過去2度の決勝トーナメント進出で蓄積した経験を活かすことで難局を乗り越えるしかない。
チームや選手には相当なプレッシャーが掛かっているはずだ。しかし、ザッケローニ監督は試合前日の記者会見で、その重圧をポジティブに捉えている発言をした。
「プレッシャーはある意味でとてもいいことだ。日本はこれまでの実績があるからプレッシャーがある」
W杯は短期決戦であるがゆえに、とても難しい大会だ。初戦を落とした前回王者のスペインが、ザッケローニ監督の会見中にチリに敗れ、1次リーグ敗退が決まった。
コートジボワール戦から中4日。そのなかで日本は本来の姿を取り戻せたのだろうか。キャプテンの長谷部誠は「次の試合に懸ける選手の気持ちは準備ができている」と敗戦のショックから雰囲気がうまく切り替えられたことを語った。
決して簡単なことではない。ただやらなければ、新しい歴史は作られない。まず目の前の一戦を見つめて、ギリシャ戦に勝利するしかない。4年間積み上げてきた日本のサッカー。昨年、同じブラジルで開催されたコンフェデレーション杯で称賛されたイタリア戦のようなサッカーを披露するしかない。
岩崎龍一(いわさき・りゅういち)のプロフィル
サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。
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