W杯優勝経験のある3チームが同居し「死の組」ともいわれる1次リーグD組で、初戦を落としたウルグアイとイングランド。今大会の生き残りを懸けた重要な一戦は、ウルグアイがスアレスのチーム全得点を挙げる活躍などで、イングランドを2-1と振り切った。ウルグアイがW杯で欧州勢を破るのは、1970年メキシコ大会準々決勝のソ連戦以来、44年ぶりのことだった。
スアレスがエースストライカーにふさわしい働きで、1次リーグ突破に望みをつなぐ勝ち点3をもたらした。前半39分にヘディングで先制し、イングランドに追い付かれた後の後半40分には値千金の決勝点をマークした。
約1カ月前に左ひざを手術した影響もあり、1-3で敗れたコスタリカとの初戦は欠場した。チームの危機に際し、「たとえ(体調が)100%でなくても、チームに大きな貢献ができる選手」(ウルグアイのタバレス監督)という期待を背負って登場。リバプール(イングランド)で今季のプレミアリーグ最多の31得点という実力を、見事に母国のために発揮した。特に決勝点は、研ぎ澄まされた得点感覚を披露。ルーズボールにいち早く反応して強烈なシュートに持ち込んだ動きは、「ピストレロ」(ガンマン)の異名そのものの早業だった。
ウルグアイは守備でも気迫あふれるプレーでイングランドに対抗した。センターバックのルガノが負傷、サイドバックのM・ペレイラが出場停止ながら、ルガノに代わって主将を任されたゴディンを中心に堅守を築いた。守備的MFアレバロらのガッツあふれるプレーぶりは、かつてのイングランドをほうふつさせた。もちろん、1次リーグ最終戦で顔を合わせるのがイタリアだけに、突破は予断は許さない。しかし、この日の情熱的な戦いぶりで、チームの士気が一気に高まったことは間違いないだろう。
一方、2連敗のイングランドは苦しくなった。エースのルーニーは後半30分に3度目のW杯で初得点となる同点ゴールを決めたものの、前後半1度ずつの決定機をゴール枠とGKムスレラの好守に阻まれたのが痛かった。ウルグアイの決勝点の場面では、ジェラード主将がカバニとの空中戦で競り負け、リバプールのチームメートであるスアレスに千載一遇のチャンスをプレゼントしたのも皮肉だった。
石川あきらのプロフィル
サッカージャーナリスト。1956年、東京都生まれ。慶応大学卒。「サッカーダイジェスト」の編集に携わり、編集長を務める。ワールドカップは1982年スペイン大会から取材を続け今回が9回目。
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