ブラジル対チリに続く南米対決となった決勝トーナメント1回戦で、コロンビアがウルグアイに2-0と快勝。同国史上初のW杯8強入りを決めた。全得点を決める大活躍を見せたロドリゲスが、初戦から4試合連続ゴールで快挙に導いた。
「JAMES TE AMO」(ハメス、愛してる)。大きな仕事を果たして交代でピッチを後にした後半40分、記者席のテレビ画面がコロンビア人とおぼしきスタンドの女性サポーターが掲げたメッセージを映し出した。ハメスとはもちろん、今やコロンビアのエースに君臨するロドリゲス。GKオスピナの妹を妻にしているとはいえ、同国の女性たちのハートもしっかりとつかんでいるようだ。
日本戦で見事なループシュートを決めた場面は鮮烈だった。私はコスタリカ対イングランドを取材したベロオリゾンテのプレスセンターで、その試合をテレビで見ていた。得点直後、英語のアナウンスはたった一言「It‘s genius」(天才)。そして、あふれる才能を再び、準々決勝進出が懸かったウルグアイ戦でもいかんなく披露した。
前半28分、先制点の場面だ。胸でコントロールした球がピッチに落ちる前の、ボレーシュートによる圧巻の一撃。ウルグアイのA・ペレイラがクリアした球を、コロンビアのアギラルがヘディングで前方のロドリゲスにパス。この瞬間、ロドリゲスは振り向いてマークに寄せるゴディンやGKムスレラを確認し、すでにシュートのイメージを描いたのだろう。半身の体勢になって胸でシュートを打ちやすい場所に落とし、左足を振り抜いた。瞬時に完璧な判断、動作でユーザーを満足させる、高性能コンピューターを思わせた。
華麗で、しかも難度の高いプレーをこのような大舞台で可能にするところは、天才と形容しても異論はないだろう。敗軍の将となったウルグアイのタバレス監督も「マラドーナ、メッシ、スアレスのように、特別な才能の持ち主」と相手のエースを絶賛した。
初戦から4連勝と快進撃のコロンビアが準々決勝で対決する開催国ブラジルは、「素晴らしい選手がそろっているし、歴史もある。ビューティフルな試合になるだろう」と若きエース。同じ背番号、同じ22歳のネイマールとの、テクニックの競演も見どころの一つだ。
石川あきらのプロフィル
サッカージャーナリスト。1956年、東京都生まれ。慶応大学卒。「サッカーダイジェスト」の編集に携わり、編集長を務める。ワールドカップは1982年スペイン大会から取材を続け今回が9回目。
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