南米開催では一度も欧州勢の優勝がないW杯。勝利の女神は今大会も南米勢にしか微笑まないのだろうか―。連覇を狙ったスペイン、イタリア、イングランド。欧州の優勝経験国でさえ決勝トーナメント進出が拒絶されたブラジルの地は、さらに過酷な仕打ちをアジア勢に用意していた。
オーストラリア、イラン、日本が早々と敗退し、アジアに残された最後の砦。それが韓国だった。1次リーグ最終戦を残して、決勝トーナメントに進出するための条件は日本と同じ。ベルギーに自力で勝ち、アルジェリア対ロシアの結果待ち次第。それも、なるべく多くの得点が必要だった。
すでに1次リーグ突破を決めているベルギーは、控えメンバー中心のチーム編成。韓国にも十分に勝機はあると思われた。
開始から韓国のアグレッシブさが目立つ展開。ただ、ベルギーも控え組が自らの存在を示そうと、度々韓国ゴールに迫る。そんな中、前半終了間際に韓国が大きなアドバンテージを手にした。デフールが反則によるレッドカードで退場したのだ。
数的優位を得た韓国の洪明甫監督は、後半開始からボランチの韓国栄に代えてFW李根鎬を投入する。前線の選手を増やし、より攻撃的に出ることを狙った交代策は当たり、韓国の攻めは迫力を増した。ただ、ここで出たのが、韓国が昔から抱える決定力不足。決定機は作るものの、大会屈指のGKクルトワの好守に阻まれ、肝心のゴールが決まらない。
この決定力不足は韓国に限らず、日本も含めたアジアの“風土病”といってもいいのではないだろうか。事実、1次リーグでアジア勢の得点は全12試合で9だった。
後半33分、一瞬の隙を突かれた絶望的な失点で、韓国の可能性は事実上断たれた。最終的に、0―1で敗れアジアで4番目の1次リーグ敗退が決まった。
1次リーグ未勝利と惨敗に終わったアジア勢が挙げた勝ち点は、わずかに3。数字上は最大36点を獲得できることを考えると、あまりにも少ない。前回の南アフリカ大会で日本と韓国が決勝トーナメント入りしたアジア勢に与えられた出場枠は、南米とのプレーオフを含めて4・5。だが、今大会の結果を受けて、その数字が見直される可能性もある。
岩崎龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル
サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。
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