すでに1次リーグB組突破が確定していたチームの対決は、オランダがチリを2-0と下し3連勝で首位となった。敗れたチリは2勝1敗で2位。オランダは後半32分、交代で出場したばかりのフェルが最初のボールタッチで均衡を破ると、やはり交代出場のデパイがロスタイム2分にダメを押した。
決勝トーナメント1回戦で予想されるブラジルとの対戦を「何としても避けたい」(オランダのファンハール監督)ための戦い。この時点でA組の結果は未定だったが、B組2位なら、次の相手はA組首位が予想されるブラジルが濃厚。首位となって、A組2位となりそうなメキシコかクロアチアと対戦したいと考えるのは当然だ。
オランダには得失点差で上回る余裕があった。今大会3得点のファンペルシーが警告累積で出場停止ということもあって、攻撃はロッベンらのカウンターアタックに頼り、自陣ではチリにスペースを与えない守備網を敷いた。スナイダーやワイナルドゥムらのMF陣は、チリのディアス、アランギスというセントラルMFを追い回して前線と分断し、エースのサンチェスはブリントが執ようにマークした。つぶし合いは、体格に勝るオランダの望むところだったろう。
まずは負けないための戦いが功を奏し、チリの閉塞感は募る一方。守りのジャブが次第に効いて、チリの集中力をそいだと言えようか。先制点はゴール前でフェルがノーマークでヘディング。さらに前がかりとなった相手の隙を突いたカウンターアタックで、やすやすと勝負を決めてしまった。
チリもブラジルとの対戦を回避したい気持ちは強かったはずだ。W杯の決勝トーナメント1回戦では、1998年、そして前回とブラジルにそれぞれ1-4、0-3と完敗。オランダ戦は出場しなかったビダルが「優勝するにはどのチームとも戦う準備が必要」と語っていたものの、開催国とは早い段階で戦いたくないのが本音だろう。
体の大きいオランダのディフェンスラインの背後を突くために、さまざまなやり方を試みた。前半はサンチェスが中盤に下がって球を受け、鋭い反転から出すスルーパスに、MFやサイドバックが走り込んだ。後半にはボーセジュールを投入して前線に3人が並ぶ形としたが、最後はタフな守りにはね返された。チリの攻撃をよく研究し、臨機応変の戦いができるオランダに一日の長があった印象だ。
石川あきらのプロフィル
サッカージャーナリスト。1956年、東京都生まれ。慶応大学卒。「サッカーダイジェスト」の編集に携わり、編集長を務める。ワールドカップは1982年スペイン大会から取材を続け今回が9回目。
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