朝からテレビのニュース、各種番組がブラジル対メキシコの報道一色に染まった17日。この日、最初の試合となったベルギー対アルジェリアも、共に持ち味を発揮して興味深い一戦となった。試合はアルジェリアにPKで先制を許したベルギーが、後半25分にフェライニ、同35分にメルテンスと、共に交代選手の得点で2―1の逆転勝ちを収めた。
ベルギーは前半25分、フェグリのPKでリードを奪われると、ブゲラを中心に守りを固めるアルジェリアを攻めあぐんだ。1トップのスダニまで自陣に引く守りにスペースを見いだせず、エース格のアザールも自慢のドリブル突破が困難。スペースを与えたら相手のチャレンジをものともせずにゴールへ突進するルカクも、見せ場をつくれなかった。
この閉塞感を打ち破ったのは、ウィルモッツ監督が「先発メンバーと同レベルの意欲を持ってほしい」と期待したサブ組の活躍だった。後半20分にピッチに立ったフェライニが、194センチの長身を生かしたヘディングで同点ゴール。同じく後半から登場のメルテンスは、カウンターアタックから値千金の逆転ゴールを決めた。
得点という結果を残した二人の交代選手の陰に隠れた感はあるものの、後半13分にルカクとの交代で出場したオリジにも可能性を感じた。ことし5月の代表メンバー発表では最大のサプライズとなったケニア系の19歳。当時はまだ代表での出場経験がなく、デビューは先月26日のルクセンブルクとの親善試合で、アルジェリア戦は4試合目だった。交代でピッチに立って間もなく、GKと1対1のチャンス。これは好守に阻まれるも、逆転ゴールの場面では相手選手を引き付け、メルテンスに十分なスペースをつくる頭脳的な動き。同43分にも相手に囲まれながら、フェライニに浮き球で心憎いラストパスを通すなど、「どの場面で起用しても、いい形で試合に入ってくれる」というウィルモッツ監督の期待に応えた。
あの2002年日韓大会の決勝トーナメント1回戦、神戸でのブラジル戦以来となるW杯の舞台に立った「赤い悪魔」ベルギー。苦しみながらもアルジェリアの堅守をこじ開けて勝ち点3をつかみ、1次リーグ突破に向けて大きな一歩を踏み出したといえるだろう。
石川あきらのプロフィル
サッカージャーナリスト。1956年、東京都生まれ。慶応大学卒。「サッカーダイジェスト」の編集に携わり、編集長を務める。ワールドカップは1982年スペイン大会から取材を続け今回が9回目。
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