アルゼンチンが準優勝した1990年イタリア大会以来、6大会ぶりの決勝進出を果たした。オランダとの対決は延長戦を含む120分が0―0で終了した後、PK戦を4―2で制した。GKロメロが2本のPKを阻止する活躍で貢献した。
アルゼンチンのサベラ監督は終了直後、テレビのインタビューに対し「とても難しく、閉じられた試合だった」と振り返り、MFマスケラーノは「戦術的な試合」と評した。アルゼンチンの攻撃を警戒したオランダが、オープンな攻め合いを避けて守備を引き締めたためだ。シュート数はオランダ7本で、アルゼンチン8本だったことからも分かるように、決定機は数えるほどしかなかった。同じくPK戦にもつれ込んだ準々決勝のコスタリカ戦でオランダが20本のシュートを放っていたことと比べても、そのことは明らかだ。いかに相手の良さを消すかが、この試合の最大テーマだったことがよく分かる。
アルゼンチンにはメッシ、オランダにはロッベンと、一人で試合を決定づけることができるFWがいる。しかし、彼らを抑えることが勝利への近道とばかりに両チームが守備を固めたため、ともに持ち味を十分に発揮できず。メッシ封じにはFWファンペルシー、MFスナイダーという攻撃の選手も加勢し、ロッベンにはDF陣に加えて、マスケラーノが目を光らせた。
また、オランダは球を相手に渡さないのが最大の防御といった感じで辛抱強く横パスをつなぎながら、突破口を探った。それが球の保持率53%という数字にも表れている。
準々決勝のベルギー戦で右足を負傷したMFディマリアの欠場も、アルゼンチンには響いただろう。サベラ監督が「砂漠の水のような存在。乾いた土地で新鮮な空気を運んでくれる」というテクニシャンの不在は、オランダの守りをずいぶんと楽にしたのではないか。
アルゼンチンはこの日、7月9日が国の独立記念日。さらにキックオフ前には、同国が生んだ20世紀を代表する名FWで7日に訃報が伝えられたディステファノへの黙とうが行われた。このようなメモリアルな日に、苦しみながらも決勝進出という責任を果たした。南米開催のW杯で欧州勢同士の決勝を阻止するという意地も示し、準決勝でブラジルを悲しみのどん底に突き落としたドイツと世界の頂点を争う。
石川あきらのプロフィル
サッカージャーナリスト。1956年、東京都生まれ。慶応大学卒。「サッカーダイジェスト」の編集に携わり、編集長を務める。ワールドカップは1982年スペイン大会から取材を続け今回が9回目。
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