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【W杯コラム】なさすぎた勇気

[2014年06月20日 12:20]

 彼らは本当に「サムライ」を名乗る資格があるのだろうか。勝負を懸けた戦いだからこそ、刺し違えてでも相手を倒す気構えが必要だったのではないだろうか。

 後半ロスタイム。勝たなければ、自力での決勝トーナメント進出の可能性が消滅する日本代表は確かに、彼らが日頃から口にする「自分たちのサッカー」をやったかもしれない。ボールを保持し、パスを回す―。だが、そこに最終目的のゴールを奪うという強固な意思は見当たらなかった。そして、4分間は過ぎていった。

 あとに残されたのは、限りない不完全燃焼感。日本の勝利を信じて見守った多くの人の目にも、この日のサムライブルーが本当に戦ったとは映らなかったはずだ。

 勝たなければいけない、そして勝つチャンスが十分にあった試合だった。前半38分にギリシャのMFカツラニスが2枚目のイエローカードで退場処分。本田圭祐をマークするキャプテンの退場は、日本にとってのこれ以上ない追い風になるはずだった。

 気持ち良くボールを回せた。しかし、それはあくまでリスクを回避する安全なパスばかり。堅守を売り物にW杯出場を果たしたギリシャのゴールをこじ開けるには、あまりにも勇気がなさすぎた。

 闘争心をむき出しに戦い続けた数少ない一人、大久保嘉人はいった。

 「バイタル(エリア)で縦パスが入ってくれば勝負できる場面で、ボールが出てこなかった。なぜか。後ろ(の選手)に聞いてください」

 カウンターが武器のギリシャに縦パスをカットされるとピンチになる可能性がある。だがそれを恐れては、初戦を落とした日本にとって本当に必要だった勝ち点3を得るためのゴールは生まれるはずもなかった。

 2試合を終わって勝ち点1。他力本願ながら、数字上は決勝トーナメント進出の可能性が残された。この日、試合の行われたナタルはポルトガル語でクリスマスを意味する。しかし、サッカーではなくボール遊びに終始した日本に、この街は最小限のプレゼントだけしか用意してくれなかった。

 岩崎龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル
 サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。

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