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【W杯コラム】息詰まる真剣勝負

[2014年07月06日 11:38]

 オランダとコスタリカが対戦した準々決勝は延長戦を含む120分間を0―0で終えた後、PK戦を4―3で制したオランダが、準優勝した前回の南アフリカ大会に続く4強入りを果たした。

 今大会のオランダは堅守速攻で“らしさ”が失われたとの評も聞こえるが、主導権を握っての攻撃には迫力があった。けん引役となったのは、2006年から3大会連続出場となるロッベン、ファンペルシー、スナイダー、カイトといういずれも30代のベテランたちだ。特にロッベンのプレーには鬼気迫るものがあった。球を持つと全速でドリブルを仕掛け、相手の捨て身のタックルに倒されても向かっていく姿に、タイプこそ違うものの、全盛期のマラドーナ(アルゼンチン)を見る思いがした。ファンペルシー、スナイダーはシュートが相手GKの好守やゴール枠に阻まれたが、十分に得点が期待できる選手だ。

 彼らの陰に隠れがちだが、カイトの存在も忘れてはならない。国際サッカー連盟(FIFA)の公式サイトによれば、総移動距離は13キロ以上で、うち約4キロをハイスピードで動き、右サイドの攻守を支えた。この2部門で匹敵するのは、チーム内ではスナイダーだけだ。ファンハール監督は「チームには若い選手が多いので、持てる力を出し切る彼らのような存在は監督にとってありがたい」と称賛する。

 第1回(1930年)大会の米国以来となる北中米カリブ海勢の4強入りはならなかったものの、コスタリカの健闘は特筆に値する。立ち上がりこそ攻勢に出たが、後半以降はPK戦決着も視野に入れた戦いだったろう。これを守備的、消極的と片付けることは簡単だが、彼らなりに双方の実力差を考え4強入りへの道筋を描いた結果だ。実際に強豪オランダに得点を許さなかったわけだから、目的をしっかり遂行できる力は見事というしかない。ピント監督も「オランダにも十分対抗できた。組織的にプレーし、しっかりとした戦術でサッカーができることを示した」と胸を張った。

 ほぼ一方的な展開で得点が生まれず、PK戦決着となった試合。多くの得点を期待するファンには不満が残る一戦かもしれないが、両チームが懸命に極限まで戦い抜く姿は手に汗を握った。真剣勝負の緊張感がひしひしと伝わって来るこうした試合もまた、W杯の醍醐味の一つだ。

 石川あきらのプロフィル
 サッカージャーナリスト。1956年、東京都生まれ。慶応大学卒。「サッカーダイジェスト」の編集に携わり、編集長を務める。ワールドカップは1982年スペイン大会から取材を続け今回が9回目。

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