アルゼンチンがイランを1-0で破り、2連勝で1次リーグF組2位以内を確定し突破を決めた。イランの堅守に苦しみながらも、ロスタイムにエースのメッシが貴重な決勝点を蹴り込んだ。
ボスニア・ヘルツェゴビナとの初戦後、メッシの「攻撃的な4-3-3(フォーメーション)のほうがいい」というコメントがメディアを騒がせた。この試合の前半を5-3-2で戦い、後半から4-3-3に変えて手応えをつかんだからだ。采配批判とも取られかねない発言を、サベラ監督は「言いたいことを言えないようでは、選手から最高のものを引き出すことはできない」と余裕で受け流したが、結果で周囲の雑音を封じる必要があったろう。
しかし、フォーメーションは試合の流れによって形を変える生き物。実際にイラン戦のメッシは、イグアインとアグエロのラインより後方にいることも多く、4-2-2(メッシとディマリア)-2や、メッシとディマリアが前進すると4-2-4のようにもなる。結局、この試合はフォーメーション以上に、最後は個の力がものを言ったと感じた。
初戦に続くメッシの得点は鮮やかだった。「常にマークされて、(プレーする)スペースをつくれなかった」(メッシ)とはいえ、ここ一番では才能を見せた。ペナルティーエリア右角付近で球を受け、左に軽く押し出すや、左足でカーブをかけて左サイドネットを揺らした。サベラ監督も「われわれにはどのチームも欲しがる天才がいる。彼がアルゼンチン人であるのは幸運だった」と、エースの価値を再認識した。
勝ち点獲得まであと一歩と迫ったイランの健闘も特筆すべきだろう。メッシをはじめドリブルのうまい相手に惑わされることなく、しっかりと地に足をつけ、集中力を発揮して突破を許さなかった。相手にスペースを与えない守備は組織的であると同時に、球際の強さも光った。ティモリアンが中盤で見せた球を奪う能力など、これも個の力といえる。
攻撃時には最前線に残るグーチャンネジャドなど3人が相手陣内に入るぐらいで、守備的に戦わざるを得なかった。それでも後半には3度の決定機をつくり、過去W杯2度優勝の強豪を慌てさせた。GKロメロの懸命のセーブがなければ、イタリアを倒したコスタリカに続く金星も夢ではなかったろう。
石川あきらのプロフィル
サッカージャーナリスト。1956年、東京都生まれ。慶応大学卒。「サッカーダイジェスト」の編集に携わり、編集長を務める。ワールドカップは1982年スペイン大会から取材を続け今回が9回目。
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