ベルギーが延長にもつれ込んだ決勝トーナメント1回戦で米国を2―1と破り、4位となった1986年メキシコ大会以来、7大会ぶりの準々決勝進出を果たした。延長前半3分にデブルイネが均衡を破り、同前半15分にルカクが追加点。米国の反撃を同後半2分のグリーンの1点に抑えた。
優秀な選手を同時期に輩出し「黄金世代」といわれるベルギーは、早くから今大会のダークホースに挙げられていた。3連勝での1次リーグ突破に続く8強入りは、その評価が正しかったことを物語る。これまでのところ、その強さは安定した守備に支えられている。4試合を終えて、失点は決勝トーナメントに進出した16チーム最少タイの2で、うち1点はPKだ。米国戦でもアルデルウェイレルト、バンビュイテン、コンパニー、フェルトンゲンと並ぶ最終ラインが素晴らしかった。全員が186センチ以上の長身で、赤い壁のようだ。
8強に残ったセンターバックのコンビで言えば、「コンパニー、バンビュイテン」は、ブラジルの「チアゴシウバ、ダビドルイス」とともにトップクラス。コンパニーは負傷で米国戦の出場を危ぶまれたが、見事なカバリングで守備を引き締める一方、ダイナミックな攻撃参加も見せた。ウィルモッツ監督と一緒に2002年日韓大会の日本戦にも出場したバンビュイテンは36歳のベテランらしく、落ち着き払ったプレーで安定感を与えた。
ここまでの快進撃は守備が引っ張ってきた印象だが、1986年大会の快挙に並ぶためには、攻撃陣のさらなる奮起も必要だろう。その鍵を握りそうなのが、ウィルモッツ監督も「彼はもっとできる」と期待を寄せるエース格のアザールだ。米国戦ではシュート、ドリブルに切れを欠き、チームを90分での勝利に導くことができなかった。
同日のスイス戦で決勝点を挙げたアルゼンチンのディマリアは、長い時間を右サイドでプレーした。準々決勝で当たるベルギー戦もそのようなら、攻撃的左サイドバックのフェルトンゲンが、相手ゴール前に進出する機会は限られるだろう。そうなると、同サイドのアタッカーであるアザールの働きが重要となってくる。
今大会ではオリジという新星が輝き、ルカクも米国戦で得点するなど復活の兆しを見せた。アザールに切れが戻れば、攻撃陣も盤石となるはずだ。
石川あきらのプロフィル
サッカージャーナリスト。1956年、東京都生まれ。慶応大学卒。「サッカーダイジェスト」の編集に携わり、編集長を務める。ワールドカップは1982年スペイン大会から取材を続け今回が9回目。
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