ガイドブックでブラジルの地図を見ながら試合が開催される都市を確認する。ここで犯してしまう間違いが、どうしても日本地図を見る感覚になってしまうということだ。冷静に考えると、この国は日本の23倍近くの面積がある。都市間の移動そのものが、日本人からすれば海外旅行みたいなものだ。
広大な範囲で行われる大会。それは試合を行う都市によって気候がまったく異なるということを意味する。これから冬を迎える南半球での大会は、前回の南アフリカと同じだが、ブラジルの場合は赤道近くの熱帯地域を抱えるから4年前とはまったく違う側面を見せるだろう。涼しい南で戦うチームは快適な環境で試合を行い、逆に北に試合会場の拠点を置くチームは高温多湿というもう一つの敵とも戦わなければならない。その意味で今回のW杯はコンディショニングのあり方が、成績を左右する大会といえるのではないだろうか。
広大な国土のために地域によって気象状況がまったく異なる。1994年に行われた米国W杯がそうだった。あの年の米国は記録的な猛暑に見舞われた。そのなかで決勝を争ったのはイタリアとブラジル。気温が40度近くになった東海岸を主戦場としたイタリアは、決勝戦を迎えるまでに明らかに疲弊していた。逆に夜になると半袖一枚では肌寒さを感じる西海岸に滞在していたブラジルは、比較的楽な試合を続けた。そしてロサンゼルスでの決勝戦を制したのは、PK戦にもつれ込んだとはいえ、体力に余力を残していたブラジルだった。
今回、日本が予選リーグを戦うレシフェ、ナタウ、グイアバの3都市はすべてが30度を超える高温多湿の土地柄だという。一方で練習拠点となるキャンプ地のイトゥーの冬の気候は資料によると16度から22度の間だという。欧州勢に比べれば日本人は高温多湿に慣れているとはいえ、調整はかなり難しいものになるだろう。その点はチーム関係者も十分に分かっているだろうが、兎にも角にも日本代表には万全のコンディションで試合に臨んでもらいたい。
岩崎龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル
サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。
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