アルペンスキーはスピード系の種目が終了し、18日から技術系の種目がスタート。女子大回転は30歳のティナ・マゼ(スロベニア)が優勝し、滑降に続いて今大会2個目の金メダルを獲得した。
雨交じりの悪天候。当初のスケジュールが1時間半早まった。1回目、マゼは1番スタート。緩斜面が少なく、急斜面の多い難コースを果敢に攻めてトップに立った。2回目は11番目のタイム。合計タイムでスーパー大回転優勝のアナ・フェニンガー(オーストリア)を0秒07抑えた。
「この日が来るのを夢見ていた。雨は気にならなかった。完璧な天気ではなくても、レースは完璧だった」と振り返った。
12日の滑降は1分41秒57でドミニク・ギザン(スイス)と五輪アルペン史上初の同タイム優勝となった。スロベニアに初の冬季五輪金メダルをもたらす偉業だったが、マゼは「もう一度、こんなことが起きるなんて信じられない」と驚きの表情を見せた。
「珍事」は初めてではなかった。2002年10月のワールドカップ(W杯)開幕戦の大回転で、マゼはW杯初優勝を達成した。この時はニコル・ホスプ(オーストリア)、アンドリーヌ・フレメン(ノルウェー)の3人が合計1分49秒91の同タイムで、W杯アルペン史上初めて1位を3人で分けた。
昨シーズンはW杯個人総合で初優勝。しかも記録ずくめだった。11勝を挙げ、24試合で表彰台に立った。W杯得点は男女を通じて史上最多の2414点をマーク。それまでの記録は、男子のヘルマン・マイヤー(オーストリア)が1999~2000年シーズンに挙げた2000点。大けがから復活し「ハーミネーター」の愛称を持つ、不死身の男の偉大な記録をはるかに追い抜いた。
171センチ、68キロ。マゼはアルペン選手としてだけでなく、ミュージシャンやモデルとしての「顔」を持つ。12年秋に初めての曲「My Way is my Decision」をリリースした。「私にとって、スポーツと音楽はどちらも大事。歌を嫌いな人はいないでしょう。音楽は私の思いを伝える大切な方法なの」。競技スキーだけが人生ではない。自分の決めた道を信じて進む―。彼女の強い意志を感じる。
(共同通信編集委員 原田寛)
☆原田寛(はらだ・ひろし)1956年秋田県生まれ。共同通信ではスキー、テニス、五輪などを取材。冬季五輪は1994年リレハンメルから2010年バンクーバーまで4大会を取材。運動部副部長、大阪運動部長を経て現在、編集委員。
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