ソチ冬季五輪で今回、スキー・ジャンプの女子個人(ノーマルヒル)が実施され、冬の大会で女子がない種目はノルディック複合だけとなった。国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長はロイター通信とのインタビューで「女子のジャンプも距離スキーも成功しているのだから、ノルディック複合を拒む理由が見当たらない。女性のスポーツを発展させるためにも素晴らしいことだ」と話し、将来の新種目としての可能性について言及した。
夏の五輪では、2012年ロンドン大会でボクシング女子が実施され、全ての競技で女子の参加が実現した。冬の五輪でも男女の「機会均等」が進む。1998年長野大会でアイスホッケー、2002年ソルトレークシティー大会ではボブスレーに女子種目が加わった。
ソチ大会では4競技12種目が新たに採用され、フリースタイルスキーとスノーボードのスロープスタイルなどで男女の種目ができた。バッハ会長は将来の五輪種目についても「いいアイデアがあれば検討したい。大歓迎だよ」と話した。
女子のジャンプは2011年4月、五輪での採用が決まった。五輪種目になったことで「認知」され、各国のスキー連盟が本格的な強化に乗り出した。11~12年からワールドカップ(W杯)が始まって3シーズン目。レベルは急速に上がってきた。とはいえ、スキー競技の伝統がある欧州でも、女子単独の大会開催は難しく、男子の大会に「便乗」することが多い。ノーマルヒルでは迫力に欠け、観客が集まらないからだ。ラージヒルを飛べる女子選手を増やし、「客を呼べる」水準の試合をしないと、注目されるのはメダルを争う4年に1度の五輪だけになってしまう。
ジャンプを飛ぶ女子選手がノルディック複合に挑戦すれば、距離スキーそのものは難しくないだけに、試合は成立するだろう。問題は五輪にふさわしいレベルと参加国・地域の数を確保できるかだ。瞬発力がいるジャンプと持久力が必要な距離スキー。男子でもバランスの取れた選手は珍しく、複合の勝者は「キング・オブ・スキー」とたたえられる。「クイーン・オブ・スキー」への道のりは決して易しくない。
(共同通信編集委員 原田寛)
☆原田寛(はらだ・ひろし)1956年秋田県生まれ。共同通信ではスキー、テニス、五輪などを取材。冬季五輪は1994年リレハンメルから2010年バンクーバーまで4大会を取材。運動部副部長、大阪運動部長を経て現在、編集委員。
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