ソチ冬季五輪の女子フィギュアスケートでは、開催国ロシアの17歳、アデリナ・ソトニコワが金メダルを獲得し、フィギュア王国のロシアが全種目中、唯一、金メダルを獲得したことのなかったこの種目での悲願を達成しました。しかし、試合前に地元ロシアで期待を一身に集めていたのは、15歳のユリア・リプニツカヤでした。過熱するロシア・メディアの取材にストレスが重なったことも、5位に終わった原因かもしれません。
競技終了後の翌日の記者会見でリプニツカヤは「練習外でも常に記者に追い回され、更衣室で盗聴器が仕掛けられていることもあった。両親だけでなく、親戚たちにも電話がかかってきた」とメディアの取材手法を批判。女性コーチのエテリ・トゥトベリゼ氏も「ユリアにはまずは休んでほしい。特に記者たちの攻撃から休んでほしい。休んでしばらくしたら、私たちはまた動き出します」と発言しました。
リプニツカヤへの熱狂がロシア国内で一気に高まったのは、今回のソチ五輪から始まったフィギュアスケート団体でロシア・チームの一員として金メダルを獲得してから。体の柔軟性を発揮した高速のキャンドル・スピンはロシアでも話題となり、強気な発言や勝ち気な表情のほか、試合後にプーチン大統領が頭をなでて褒めたたえる映像も繰り返し流されるなど、今回のソチ五輪で地元ロシアの顔の一人となったのは間違いなくリプニツカヤでした。
しかし、団体の金メダルがリプニツカヤの環境を一変させました。女子個人戦への調整のためにソチから練習拠点のモスクワに戻ると、空港では多数の報道陣や熱狂的なファンが待ち受け、複数の警備員が周囲を警護しなければならなくなるほどの状態に。行く先々でメディアが待ち構え、女子個人での金メダルを願う国民の期待が一気に高まりました。
喧騒に巻き込まれたリプニツカヤとは対照的に、ソトニコワは静かな環境の中で調整ができたそうです。「団体でロシアのメンバーに選ばれずにとても悔しかった。個人ではメダルを取ると心に決めていた」とソトニコワ。ショートプログラム、フリーと精彩を欠いたリプニツカヤとは異なり、ソトニコワは輝きを放ち、初日のショートグラムでは2位に。フリーでは韓国のキム・ヨナを逆転し、夢だったという金メダルを獲得しました。
お互いに刺激し合える存在というソトニコワとリプニツカヤ。次回の韓国・平昌冬季五輪に向けても2人のライバル物語は続くのでしょう。(ソチ共同=平林倫)
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