吉村昭講演録CD発売
記録文学「三陸海岸大津波」や「生麦事件」などの歴史小説で知られ、2006年に亡くなった作家の吉村昭さんが行った講演を集めたCD集「吉村昭講演録 私の史実探究」(制作・日本音声保存)が発売された。「ちょっとだけ落語家を志望していたこともある」という吉村さんの語りのうまさを堪能できる内容になっている。
5枚組みのCD集に収録されているのは、1986年から2000年にかけ、東京都内や岩手県宮古市、広島県呉市で開催された5講演。書き出しに失敗して「私は潔い人間なので、250枚書いた原稿を焼いちゃいました」という「桜田門外ノ変」など、自身の作品をテーマに、資料との向き合い方や執筆の際の裏話を惜しみなく披露する。
印象に残るのは、抑制のきいた筆致が特徴の作品とは裏腹の軽妙な語り口。約1時間の講演それぞれに、テーマに至る前振りの話題や落ちが用意され、張りのある声音で聴衆を引き込んでいく。
吉村さんの長男の司さんは「父は大の落語好きで、若い頃は寄席に通い、落語家を目指したこともあるようでした。講演は、そんな父の“憂さ晴らし”だったのでは」と笑う。司さんによると、吉村さんの妻で作家の津村節子さんも「うまいねえ」と話していたという。
「吉村昭講演録」は9720円。問い合わせは日本音声保存、電話03(5561)9008。
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