井筒監督の15作を特集上映
井筒和幸監督の自選15作品を集めた特集上映が、東京・京橋の東京国立近代美術館フィルムセンターで17~29日に行われる。井筒監督は「今度はバブルに向かいかけの1980年代中頃の青春を描く」と次回作にも意欲満々だ。
デジタル素材の時代に突入した映画界だが、フィルムの味に深い愛着を寄せる。「午後3時半に人間はまだ夕方と思わないが、フィルムはいち早く赤の波長を感じ取る。早朝独特の青みや、湿気を含んだ空気まで映し出す。そのきめ細かさには(高精細の)4Kも追いつけない」と力説する。
光と影を生々しく捉えるフィルムという“生き物”。60年代末頃の青春を描いた「ガキ帝国」(81年)「パッチギ!」(2004年)では、その時代特有の色合いや空気感の再現に力を入れたという。
「当時はこういう赤のセーターを着ていたなとか、蛍光灯がなかった時代を描くなら裸電球の色合いを出すとか、そういうことが実は大事。映画は風俗ですから」
服装や髪形はもちろん、人の顔かたちも世につれ変わってゆく。次回作に向けても、80年代当時の写真などを集めてディテールを積み上げ、観客の記憶を揺さぶる時代表現に取り組む。
「戦後まもない時代にさかのぼったものも、いずれやりたい。それはやはりフィルムで撮らないとね」
特集上映は代表作のほか、劇団維新派の公演を追った井筒監督唯一のドキュメンタリー映画「足乃裏から冥王まで」(79年)など珍しい作品も。21日と28日に自作を語るトークイベントを開く。
※無断転載を禁じます。 当ホームページに掲載の記事、写真等の著作権は大分合同新聞社または、情報提供した各新聞社に帰属します。