当選を決め、バンザイをする首藤奉文氏(右)と妻の寿子さん=27日午後11時10分、由布市庄内町の選挙事務所
任期満了に伴う由布市長選、市議選は27日、投開票され、市長選は現職の首藤奉文氏(69)が新人で前市議の高橋義孝氏(46)との一騎打ちを制して3選を果たした。投票率は72.56%(当日有権者数2万9231人)で、合併後の初代由布市長を決めた2005年(09年は無投票)の84.27%を大きく下回った。
首藤氏は8年の実績をアピールするとともに、行財政の効率化を図る本庁舎方式の導入などを訴えた。相手候補への自民党の強力な支援に対しても「巨大政党でなく、市民の手で由布市をつくろう」と呼び掛け、支持を集めた。
高橋氏は「現市政は将来のビジョンが見えない」と訴え、本庁舎方式についても「既存の施設を使えば増築に8億円かける必要はない」と指摘。自民党幹部らの後押しを受け追い上げたが、一歩及ばなかった。
公約を実行し強い由布市に
首藤氏の話 合併後、市長になって8年、やってきたことは間違っていなかった。本庁舎方式の導入など公約を実行し、どこにも負けない強い由布市にしていきたい。
「対自民」の戦い制す 政策論争は不十分
◆解説◆首藤奉文氏が3選を決めた由布市長選。相手候補の高橋義孝氏の応援に自民党幹部らが相次いで駆け付ける異例の選挙戦となったが、市民と地道に関係を築いてきた首藤氏が逃げ切った。
序盤は首藤氏が知名度で優位に立っていたが、自民党の後押しを受ける高橋氏が国や県とのパイプを強調しながら猛追。ただ、高橋氏の“応援団”であるはずの政党が前面に出ることで「現職対自民」の構図が市民の間に広がっていった。
選挙戦終盤には石破茂党幹事長ら党幹部が相次いで市入り。だが、「人口も少ない小さな地域の選挙になぜ大政党幹部が来るのか。基地移転などの問題が背後にあるのでは」との疑念は徐々に拡大。「地域のことは大政党でなく市民が決めよう」と呼び掛けた現職の訴えが、最後は幅広い支持を獲得した。
市の将来を考える選挙にもかかわらず、政策論争が十分だったとは言えない。3期目を「発展の時期」と位置付け、集大成の4年間となる首藤氏。本庁舎方式への移行や景観、環境といった市の特色をめぐって意見が割れている問題もあり、市民の声に耳を傾けながら市政を進めていくことが求められる。
事務所に100人「これが市民の力」
首藤奉文氏の陣営は由布市庄内町の選挙事務所に100人以上の支持者が集まり、午後10時45分ごろ、当選確実が伝わると「よっしゃ!」と歓声。首藤氏が会場に現れると拍手が鳴り響き、握手を求める人だかりができた。
万歳三唱の後、宮崎幸一選対本部長が「極めて厳しい戦いだったが、巨大政党を打ち破った。これが由布市民の力だ」と謝辞。首藤氏は「今回の選挙は巨大政党と“市民党”との戦いだった。はねのけることができたのがうれしくてたまらない。市民を誇りに思います」と感謝の言葉を口にした。
党幹部投入でも現職の壁破れず
高橋氏を推薦した自民党県連は党幹部を相次いで投入するなど国政選挙並みの態勢を敷いたが、現職の厚い壁は破れなかった。高橋氏とともに支援者の前に立った党県連の衛藤晟一会長は「結果を得られず、大変申し訳ない」と敗戦の弁を述べ、深々と頭を下げた。
会場から深いため息
由布市湯布院町の公民館で開票を待った高橋陣営。落選が伝わると、約80人の支援者からは深いため息が漏れた。会場に姿を見せた高橋氏は「結果は私の力不足であり、不徳の致すところ。今後は原点に立ち返り、地域の役に立てるよう感張りたい」と頭を下げた。
首藤 奉文(しゅとう ほうぶん) 69 無現(3)
大分大卒(中学教諭、県教職員一課参事、庄内町長2期)市内庄内町出身。
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