日本の現状・私たちの大分の現状

日本の道路の現状

 海と山に囲まれ、豊かな自然に囲まれて暮らす日本。戦後の高度経済成長期、地域を結ぶ社会インフラを整えるために全国でたくさんの道やトンネルが生まれ、橋が架かりました。

 私たちの生活に欠かせない社会資源である道路や橋ですが、鉄骨やコンクリートでできた建造物は時間の経過とともに劣化を起こします。集中的に建設された道路構造物は今後、急激に老朽化することが懸念されています。九州内の道路橋は約10万橋。トンネルは約1700本。現在、安全な通行が難しくなったため通行や車両重量に規制がある橋は九州で約150カ所(全国では約2千カ所)あります。安全に道路を使い続けられるように定期点検や早めの補修など、各地でインフラ長寿命化の取り組みが進められています。

大分の道路の現状

道路施設って何?

 一口に「道路」といって思い浮かべるのは、アスファルトで舗装された道が多いでしょう。しかし道路が機能するためには、ほかにも橋梁やトンネル、道路周辺の盛り土(もりど)や切り土(きりど)、道路標識、道路情報版、照明灯なども必要です。これらを含めて「道路施設」といいます。

 九州内の総道路延長は約15.8万㌔。道路は管轄によって国道と市町村道、県道、高速道路に分かれますが、九州では約80%が市町村道になります。今回の特集は、道路の現状や老朽化について解説。奥深き道路の世界へようこそ。

橋梁橋 梁

鋼橋、コンクリート橋(PC橋、RC橋)など

トンネルトンネル

舗装舗 装

舗装(アスファルト、コンクリート など)

その他その他

盛り土、切り土、道路標識、道路情報板、照明灯 など

橋梁・トンネルの今

橋梁・トンネル建設後50年以上経過の割合 全国一トンネルの多い県が大分県って知っていますか? 全国に道路橋は約70万橋あり、九州では約10万橋の橋が架かっています。トンネルは全国で約1万本、九州では約1700本。中山間地が多い大分県内にはトンネルが554本あり、全国1位。複雑な地形のため、橋も多くあります。

 九州の橋やトンネルは戦後すぐに造られたものが多く、老朽化が進んでいます。九州内で建設後50年以上が経過した橋梁は2012年で18%ですが、10年後の22年には44%、20年後の32年には68%と半数以上になります。トンネルも同じく、九州内で建設後50年以上が経過したトンネルは2012年で23%ですが、10年後には37%、20年後には49%に増加していきます。近年、老朽化によって通行止めや通行規制がされている橋は約150橋。2008年から比べると通行止めは3.9倍になり、大幅に増加しています。

橋の老朽化

 橋には「三大損傷」と呼ばれる、橋を傷める劣化要因があります。それは、疲労、塩害、アルカリ骨材(こつざい)反応という三つ。それぞれの要因を解説します。

疲 労

疲労|劣化過程疲労は、大型車両が繰り返し通行することによって素材に疲労が蓄積すること。鋼部材が疲労すると亀裂が入り、さらに進むと割れてしまいます。コンクリートの場合はひび割れができ、進むとコンクリートが抜け落ちる危険があります。

塩 害

塩害|劣化過程主に海岸部の橋に多く見られる症状です。コンクリート内の鉄筋や鋼材が塩化物イオンの侵入で腐食・膨張し、コンクリートにひび割れや剥離(はくり)が起こります。進行すると鉄筋などが露出し、割れてしまう危険が出てきます。

アルカリ骨材反応

アルカリ骨材反応|劣化過程コンクリートの骨材に反応性の鉱物が含まれていた場合に、コンクリート中のアルカリ性の水分と化学反応を起こして骨材が異常膨張することがあります。膨張すると亀の甲羅のようなひび割れが起こります。進行すると鉄筋の変形や割れてしまう危険があります。

その他の損傷原因

橋にはいろいろな形式があります。橋を傷める原因には、漏水(ろうすい)による腐食やコンクリートの中性化など多くの原因があり、ケースバイケースの対応が求められます。

過積載(かせきさい)による損傷

 橋や道路を傷める要因として問題になっているのが、過積載車両がもたらす損傷です。過積載とは、字の通り法定重量よりもオーバーした荷物を載せている車両のこと。例えば、軸重20㌧の車1台が道路に与える影響は、軸重10㌧の車の約4千台分。調査によると、車両総重量が20㌧を超える違法な大型車両は全通行量の0.3%。しかし、一部の違反車両によって道路には大きな疲労が掛かり、コンクリートやアスファルトのひび割れやわだち割れといった劣化を引き起こしているのです。

道路橋の劣化に与える影響

みんなの道路を守るために

 道路の安全を守るため、全国で老朽化対策が進められています。国土交通省では、道路のメンテナンスに関する統一基準を作成。すべての橋梁やトンネルは5年に1度、目視によって点検することが決まりました。点検から診断、措置、記録といったメンテナンスサイクルを確立することで、道路の管理をきちんと行うよう指導しています。大分県でも道路メンテナンス会議が設置され、さまざまな立場の人が連携して道路を守る仕組みづくりが始まっています。
市民が参加する身近なメンテナンス活動も各地で行われています。ボランティアサポートプログラムは、地域住民が参加して道路の美化活動など行う活動。道守(みちもり)活動は、道路管理者と連携して道を守るもので、道沿いの樹木の手入れや調査・研究、危険箇所の点検など、地域性豊かな活動が展開されています。
道路の見守りからメンテナンスまで、「道サポ」の活動はたくさんあります。あなたもできることから始めてみませんか。

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