おおいた遺産

真玉海岸の夕陽

[2009年01月30日 16:54]

海に落ち干潟に光る壮大な真玉海岸の夕陽

千変万化の輝き

 国東半島の西の端、真玉(豊後高田市)の干潟に落ちる夕陽(ゆうひ)はまさに壮大である。刻一刻、夕陽の輝きは千変万化する。その日の潮の干満によって、あるいはその日の天候によって、さらには見る場所によって、真玉海岸の夕陽は同じ姿で落ちて行くということは全くないだろう。
 国東半島は日本屈指の火山半島だ。放射状に尾根と谷を海に向かって延ばす円い半島の地形的な面白さは、火山としての成立後に傾動したことである。
 つまり、半島は北側が沈み込み、南側が盛り上がった。これによって北の先端部、国東市国見町などにリアス式の沈降海岸が生まれ、一方、南の内陸側には隆起による遠浅の浜辺ができた。遠浅の浜は東に杵築市の奈多・狩宿などが別府湾に面し、そして西に豊後高田市の周防灘沿岸に呉崎や真玉などの海岸が生まれた。
 同じ周防灘・豊前海に面した沖代・宇佐平野の海岸線もまた遠浅で、干潟の広がりは有明海沿岸に匹敵するとも言われ、真玉海岸はその東端に位置する。遠浅の海辺は干拓に適し、多くの新田が造られた。呉崎も真玉も同様に干拓地となった。
 ただ真玉では、真玉川以北の尾鷲、臼野にかけての海岸に干拓されない手付かずの干潟が残る。この干潟に輝きを映して海に落ちる太陽が素晴らしいのだ。しかも、国道213号線が走り、交通の便も良い。大分県では、海に落ちる太陽を見送ることのできる場所は少ない。真玉海岸は、あるいは唯一のところとも言える。
 井上靖の「シルクロード詩集」にはたびたび落日が登場する。よほど夕陽が好きらしい。だが、その落日は砂漠や草原のもの。彼に、海に落ち干潟に光る真玉海岸の「日本の夕陽百選」でもトップクラスの光景をぜひとも見てほしかった。
(文・梅木秀徳 写真・竹内康訓)

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