おおいた遺産

両子寺仁王像と山門

[2009年01月05日 17:01]

冬、雪の綿帽子をかぶり、少し穏やかな表情を見せる仁王像

四季折々の表情

 笠(かさ)を伏せたような円形の国東半島。それは「くにさき火山」とも呼ばれ、中央部の高まりから四囲に向かって、山の尾根とそれに挟まれた渓谷が放射状に延びている。放射の中心点は半島最高峰の両子山(標高七二一メートル)。山頂に立つと、半島の地形的特色がよく分かる。
 その中腹にあるのが両子寺。国東六郷満山の現在の総持寺となる古刹(こさつ)である。寺の近くで半島を横断する道路と国東市安岐町からの道が交差し、そこから寺への参道が延びている。横に車道もあって、寺の直下に駐車場もあるが、参拝するには昔ながらの参道をお薦めする。
 不信心者が渡ると落ちるという無明(むみょう)の橋を過ぎると、すぐに石段が始まり、両脇に仁王像が立つ。観光国東のポスターで知られる石像である。脇に歌碑などのある石段の途中に山門。綜合(そうごう)門とも呼ばれている。
 仁王像は半島で最も威容を誇るとされ、文化十一(一八一四)年の作。滝沢馬琴が「豊後国両子寺縁起」を著したのは次の年だった。山門もまた、半島で最も古いとされる。参道は桜から夏の緑と移り、秋には紅葉のトンネルとなる。そして冬、仁王像は雪の綿帽子をかぶり、ちょっぴり穏やかな表情を見せる。
 駐車場まで登ると車や参拝客が四季を通じて絶えない。国東めぐりの定期観光バスも立ち寄る。もう一度、石段を上ると本堂の護摩堂。新しい講堂から奥の院へと登ると、神仏習合の歴史もしのばれよう。両子寺会館まで戻って一息つく。
 両子寺は満山の中山本寺(なかやまもとでら)。かつて多くの僧たちが修行したところ。時雨紅葉(しぐれもみじ)など七不思議をたずね、境内をゆっくり散策する。伽藍(がらん)の配置など、山岳寺院の立地状況を見るのに欠かせない。九州西国三十三カ所の一つで、子授けの観音霊場としても有名である。

文 梅木秀徳
写真 竹内康訓

過去の特集 - おおいた遺産

1月05日

12月15日

12月08日

※無断転載を禁じます。 当ホームページに掲載の記事、写真等の著作権は大分合同新聞社または、情報提供した各新聞社に帰属します。
Copyright (c) 2008 OITA GODO SHIMBUNSHA