大分ITネットワーク社会研究会

〈5月例会〉4Kに大きな可能性

[2013年05月29日 10:07]

天野昭氏(月刊ニューメディア発行人)

 大分ITネットワーク社会研究会の5月例会が28日、大分市のレンブラントホテル大分であり、月刊「ニューメディア」発行人の天野昭氏が「次世代4K8K放送とスマホ放送の大分インパクト」と題して講演した。
 4Kは画面の走査線数が4千本の意味で、解像度はフルハイビジョンの約4倍になる。天野氏は4Kの放送が今後普及するとテレビの画質が良くなるだけでなく、社会的に大きな変化が起きるとの見方を示した。
 例えば販売業では、目で見るのと同じ精度の画像で手軽にスマートフォン(多機能携帯電話)やタブレット型端末で商品を選べるようになり「買い物の形が変わるのではないか」と予測。今以上に距離と時間を超えて商品やサービスを提供できる可能性を強調した。
 地域の情報発信の面では「産品やご当地キャラクターなどの知的財産を正確に、リアルタイムで全国に発信しやすくなる」との利点を挙げた。若い世代を中心に地域のPRに積極的に取り組むことを期待した。
 医療分野では胃カメラなどの動画から高精細な静止画を取り出せるようになるため、顕微鏡手術の中継や会議の資料作成などへの活用が進むと説明した。

道州制推進に警鐘
 天野氏はITと自治体、地域づくりのかかわりについて、ブロードバンド環境を広く普及させ、IT系企業などのサテライトオフィス誘致を進める徳島県の取り組みを例示。「文明の利器を活用し(首長を含めて)新しい時代に適応できる自治体は残っていける」と強調した。
 国政レベルで道州制を推進する動きが出ていることを念頭に「(道州制で)大分県は消え去るかどうかの境目にある。地域政策に加え、ITを活用した若い人向けの産業・雇用政策が必要」と指摘。ICT(情報通信技術)の高度化で地方でも情報発信や魅力的なコンテンツづくりが可能として「地域が生き延びるには自立目標や情報政策のような活性化プランを持たねばならない」と訴えた。
 現在の政府の地方政策では「力のない自治体は滅びてしまう」と危機感を示す天野氏。講演後、道州制について「合理的であっても地域の個別性や文化、成り立ちを無力化するもの」と批判。「北海道では札幌市への一極集中が生じ、周辺部は過疎化で地域の力が弱まった。平成の大合併で広域化した自治体の現状はどうなのか。まずはそこを検証すべきだ」と強調した。

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