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手話にない言葉理解NIEのバックナンバー

県立聾学校高等部(大分市)

書き写しで社会に関心

「情報の泉」コーナーで新聞記事を見る2年生
新聞記事の書き写しをする生徒たち
藤田浩子教諭

 聴覚にハンディがある子どもらが学ぶ県立聾(ろう)学校。高等部の1~3年生は2013年度から、朝学習の時間に新聞記事の書き写しに取り組んでいる。

 “書き言葉”の理解を深めることで、社会に出た後のコミュニケーション力を高める目的。同校によると手話には助詞がなく、例えば「これがいい」「これでいい」のニュアンスの違いなどがつかみにくいという。せっかく就職した職場に“言葉の壁”で溶け込めず、辞めていくケースがままある―。キャリア教育上の課題意識から校内の研修グループが、読解力、表現力、社会への関心を高めようと取り入れた。

 記事は教員が交代で選び、生徒が毎週火曜日に書き写す。翌日に分からない言葉を調べ、記事を読んだ感想を書く。教員が添削してコメントを付け、よく書けているワークシートは廊下に掲示する。

 1月下旬には、中国科学院のチームがサルのクローンを初めて誕生させたことを伝えた記事が教材に。生徒の感想はクローンへの賛否両論で盛り上がった。

 書き写し教材以外のいろんなニュースにも関心を広げてもらおうと、定期的に記事を張り替える「情報の泉」コーナーも設置。本年度から、生徒自身が記事を選ぶようにした。生徒が見て興味を持てば、印として「いいねシール」を貼る仕組み。ニュースごとの関心度が大まかに分かる。

 担当する藤田浩子教諭は「生徒の力が把握できるだけでなく、書いた感想から興味や考えが分かり、生徒一人一人を深く理解する上でも役立つ」と学習、生徒指導両面での効果を強調。「生徒も教員の予想以上に効果を感じており、今後も続けていきたい」と話している。 (宗岡博之)

生徒の感想

いろんな知識身に付いた諧(かのお)玲汰さん(18)=3年=

 新聞記事を読み続けて、いろんな知識が身に付いた。社会の今がどうなっているのか、大まかだが分かるようになってきた。起きていることが「なぜこうなったのか」と考えられる大人になりたい。

自分と違う考え方もある田辺莉奈さん(18)=3年=

 サルのクローンについて、いいか悪いかを考えてワークシートに書いたが、他の人には自分と違う考え方もあってなるほどと思った。高等部で文章を見て写し、言葉を調べ続けたことで、多くの言葉を覚えられた。

分かる言葉の量が増えた持丸裕也さん(18)=3年=

 記事に出てくる分からない言葉を調べていくうちに、分かる言葉の量が増えた。文章を読むことで、特に助詞の使い方が分かるようになった。多くのニュースに興味が湧いたので、進学後もしっかり読みたい。

書くスピードが速くなった▽見初涼弥さん(18)=3年=

 記事を読む、写して書くスピードが速くなった。服の大量廃棄の問題を指摘した記事に興味を持った。4月から職業訓練校に進学するが、車のニュースが好きなので、将来は車に関連した仕事がしたい。

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