NIE

戦争の現実聞き学ぶNIEのバックナンバー

豊後高田市高田中学校2年1組

「記憶」伝える平和授業

芳本清一郎さん(右)の話を聞く生徒
過酷な体験に聞き入る生徒
安岡和俊教諭

 戦争の時代を生きた語り部が年々減る中、子どもたちに生の声を伝える平和授業。豊後高田市上香々地の芳本清一郎さん(92)を学校に招き、2年1組の36人が芳本さんの体験談に真剣に耳を傾けた。

 記事教材は芳本さんが満州での従軍経験やソ連軍下での強制労働などを語った、大分合同新聞7月3、10日付夕刊の「伝える戦争の記憶」。事前に読んだ上で話を聞いた。「ぜひ直接話を聞いて、勉強しましょう」と安岡和俊教諭。

 「左の耳は戦争中、鉄砲の音で鼓膜を痛めて聞こえません」。今も残る戦争の痛みから、芳本さんは話し始めた。訓練地の宮崎県都城市まで会いに来た母とは出征後だったため入れ違いに。母の愛情にあらためて感謝した。

 敗戦、武装解除…。治安悪化や食料不足など、満州での生活は一変した。「負けたら無残なもの。日本人は小さくなっていないといけなかった」と芳本さん。

 ソ連軍に拘束され、満州での強制労働。「満州は寒い。海水が凍る寒さで氷点下15度にはなった。手袋3枚、靴下2枚を重ね着し、防寒靴。冬のテント生活を毛布1枚でしのがなければならなかった」。そんな世界があるのかと、生徒は話に聞き入った。

 芳本さんは最後に、戦争は嫌だという思いで作ったという俳句を紹介した。「空蟬(うつせみ)の 楼門にゐて 世を憂ふ」。大声で鳴いていて抜け殻だけ残ったセミ。戦争のにおいがする世の中になっていることを心配してくれていたのではないか、というのが句に込めた思いだった。

 「氷点下15度の生活とか、想像もできないですね。現実を伝えたいという思いからのお話でした。感想を書いてみましょう」と安岡教諭。各生徒が感想文をまとめ、授業を終えた。(宗岡博之)

生徒の感想

恐ろしさをあらためて実感丸林優太さん(14)

 戦争の恐ろしさや怖さをあらためて実感した。最近ニュースを見ると、北朝鮮を巡る緊迫した状況が続いている。多くの人の努力でそういう状態が早くなくなるようにしてほしいと思った。

実体験が具体的に分かった佐々木勇斗さん(14)

 身ぶり手ぶりも交えた話がうまく、記事と合わせて実体験が具体的に伝わってきた。戦争を経験された方ということで厳しい人なのかなと想像していたが、優しそうな感じの人で聞きやすかった。

知らない言葉も多く難しい高橋里菜さん(14)

 芳本清一郎さんが都城市でお母さんと会えなかったのが悲しいと思った。普段から長い文章をあまり読み慣れていなかったんだけど、新聞記事には知らない言葉も多く出てきて難しかった。

いい文章で読みやすかった池本夏菜さん(14)

 戦争はたくさんの人が被害に遭ったり苦しんだりするので、絶対にあってはいけないこと。新聞自体あまり読まなかったが「伝える戦争の記憶」はいい文章。本は好きなので、読むのが苦にならなかった。

このページの先頭に戻る