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人生設計、実現するには?NIEのバックナンバー

中津市城北中学校2年3組

事象を読み取り、組み立て

授業を受ける2年3組の生徒たち=中津市の城北中学校

 「ライフプランを設計しよう」と題した、全3回の学級活動の時間。中学校を卒業した後に何を学び、どう働き、どんな家庭生活を送るのかを考えることで、進路への目的意識や意欲を高める狙いがある。

 36人の生徒は1回目にプランを作成。とはいえ、生徒は特に「働く」ということにまだまだ実感が湧かない。2回目で新聞記事から社会の動向を知り、プランと照らし合わせる。山本裕子教諭は「自分のライフプランが将来実現できそうか、考えてみましょう」と呼び掛けた。

 働き方による賃金格差などを解説した大分合同新聞2016年6月6日付朝刊の特集記事をはじめ、共働きの増加、育児休暇取得の課題、保育園の待機児童問題などを取り上げた記事を班ごとに回し読みさせた。

 山本教諭は記事から読み取れるキーワードを、付箋に書き出すよう指示。複数のキーワードをまとめ、社会の現況に導かせた。「共働き家庭が増えている」「男性が長時間労働になりがち。育休を取ったり家事ができにくい」「保育園に空きがない。土地が確保できず保育園が造れない」などの事象を読み取った生徒たち。

 「ライフプラン、もう一度点検してみてください。実現できますか?」と山本教諭。生徒自身が思い描く未来と現実とのギャップを減らしていくよう生徒に求めた。班ごとの話し合いで「やっぱり共働きってした方がいいのかな?」などの声が聞こえた。

 山本教諭は「ライフプランにより実現性を持たせるとともに『こんな社会になってほしい』『こんな制度があったらいい』といった問題意識もはっきりさせ、発信できるようにしましょう」と2回目を結んだ。

 3回目では誰もが働きやすい社会づくりに向けた行政の取り組みや、新しい働き方を取り入れた企業などの新聞記事も回し読みした。生徒からは「今まで考えなかった将来の自分の姿を意識するようになった」「自分がどう生きたいかを、結婚する人にしっかり伝えられるようにしたい」などの意見が出た。

授業の狙い

社会の課題とどう関わるか

山本 裕子教諭
「力強く未来の進路を切り開いてもらいたい」と山本裕子教諭

 2年3組は年度当初から学級力向上を目指し、学級の課題を生徒自身が把握することでより良い学級づくりを進めている。目標を意識し、声を掛け合って学校生活を送る中で、成長した姿が多く見られるようになった。温かい雰囲気の中で親密な人間関係が築かれ、規範意識も高まっている。
 一方、将来の進路や労働を主体的に捉えきれていない生徒が多い。一人一人が一生を展望し、社会人、職業人、家庭人として自己実現を図るための進路学習が必要だと考えてきた。
 学級活動「ライフプランを設計しよう」は、卒業後の自分の進路から仕事、家族にまで及ぶ人生の設計図を作り、取り巻く社会の状況についても情報収集することで、労働や子育てなど社会の課題が自分の将来像とどう関わるか考えるのが狙い。
 新聞記事から社会について多くの情報を得て、グループで他の生徒と対話することで価値観を肉付けしていく。社会の問題を知り、正しい問題解決の方法を身に付ける機会にもなる。学ぶこと、働くことの意義や誰もが働きやすい社会をつくる上での課題などを理解し解決策を探り、力強く未来の進路を切り開いてもらいたい。

生徒の感想

待機児童への理解深めた猫田桃子さん(13)

 待機児童が多いことはテレビで知っていたけど、いろいろな悩みがあることが記事から分かった。職に就くのは難しいと思うけど、やりたいことをしっかり見つけるために力を付けていきたい。

子どもの問題、前進望む杉田大飛さん(14)

 女性の就業率が上がってきた反面、子どもを保育園になかなか入れられない問題があることが記事から分かった。子どもに関係することが早く前に進んでほしい。これからも関心を持ち続けたい。

仕事と子育て、両立は大変外園怜未さん(14)

 たくさんの記事を読んで、女性が仕事と子育てを両立することや、家庭でどう役割を分担するかが難しいんだなあと感じた。保育園の待機児童がいっぱいいることに、あらためて興味を持った。

女性が働きやすい環境に古田幸大さん(14)

 まだまだ男性社会の中、女性が働きにくくなっている現状が新聞から読み取れた。育児や家事を女性ばかりに任せず、女性が働きやすくなるよう男性から行動する必要があるんじゃないかと思った。

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