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社会の“今”に関心をNIEのバックナンバー

大分鶴崎高校1年生

自らの意見をまとめ発信

高齢者の事故防止について、切り抜き新聞を基に発表する1年生

 「社会研究」と題した総合的な学習の時間。大学入試の面接や小論文で時事問題が扱われることが多い現状を踏まえ、1年生から社会の“今”に親しむ。239人が4~5人のグループに分かれ、最近の社会のニュースからテーマを一つずつ選び、関連する新聞記事を調べた。

 30日まで作品を募集中の「第2回おおいた切り抜き新聞グランプリ」(大分合同新聞社主催)を学習に活用。調べた結果を1枚の切り抜き新聞にまとめた。津波の危険性について調べた、3組の勝木琉さんは「一つのニュースを探していると、別のニュースも目に入り、気になった」と、新聞をめくることで意外なニュースに出合えたことを新鮮に感じた様子。

 この日は六つのクラスごとに、調べたニュースの発表会。5組では水江友和教諭が「今起きていることがどんなことか、日頃から注意していないと面接や小論文で言葉として出てこない。素晴らしい発表を」と生徒に呼び掛けた。

 「アメリカの政治とトランプ現象」「天皇陛下の生前退位」「保活“消耗戦”」「日本から海外への情報発信」「鳥インフルエンザと警戒態勢」…。各クラスで、興味深い発表テーマが並んだ。他グループの発表を聞くことで、自分が調べた以外のニュースもある程度深く学ぶことができる。

 5組では「大分国際車いすマラソン大会」「カジノ法案」「高齢者の事故防止」などのテーマで発表。高齢者医療費について調べたグループは「困っている高齢者を見かけたら声を掛けよう。高齢者の医療費は高校生には意識しにくいけど、意識する一歩を踏み出そう」と呼び掛けた。質疑応答の時間も。「大分のような国際的な車いすマラソンの大会って、国内外に他にもあるの?」など、疑問は尽きない。

 進路目標達成に求められる、自らの意見をまとめ、発信する力。水江教諭は「新聞記事もネットニュースも一つの情報源だが、活字の情報源を読むことが大事。経験や確かな情報に基づく意見だからこそ他人に伝わり、自分の身も助ける」と結んだ。

授業の狙い

進路への意識高める

水江友和教諭
大分鶴崎高校の水江友和教諭

 本校は大半の生徒が進学を希望。受験で小論文や面接を課すところも多く、最近の社会的事象についての出題が多く見られる。

 練習していないと対応するのは難しく、そのためには日頃から社会についての予備知識が必要。3年生になってから始めるのでは、どうしても理解が浅くなってしまう。

 総合的な学習の時間で進路への意識を高めるため、社会的事象を徹底追究させてみたいと考えていたところ「おおいた切り抜き新聞グランプリ」の存在を知り、切り抜き新聞作りも含む3回の「社会研究」として取り組んでみようと考えた。

 追究する事象をグループで決め、記事を集めて切り抜き新聞を作り、分かったことを学級全員の前で発表する。その際には、自分の考えを明確に表現する力が求められる。これまで新聞に触れる機会がなかった生徒が、新聞を通じて多角的に物事を読み取るようになってくれればとも期待している。

 生徒は画面上の文章には慣れているが、印刷された文章には慣れていない。印刷媒体で“今”を知る経験を、実際の入試にも役立てたい。

生徒の感想

熱中して学習に取り組めた川上瑞貴さん(15)

 野球をやっているので、大分のスポーツを調べてみた。野球以外も見ていきたいという思いを強くした。記事の切り抜きは大在西小学校時代にもやったけど、難しい字も読めるようになり、より楽しく熱中できた。

身近なことまでよく分かる佐藤華純さん(16)

 高齢者の交通事故の原因や、事故防止の難しさが分かった。運転免許制度をどうするか、若者が事故防止のために何ができるかなどを考えた。新聞はもっと難しいと思っていたけど、身近なことまでよく分かった。

勉強になった専門家の「声」吉田大希さん(15)

 天皇陛下の公務と生前退位について、専門家の意見を調べた。生前退位は専門家の間でも反対、賛成両方の意見があることが分かった。新聞はスポーツ面ぐらいしか見なかったが、少し見るだけでも勉強になる。

米国の政治ニュース楽しみ長野真唯さん(16)

 米国の大統領選挙を調べた。今まで詳しく知らなかったが、TPPのニュースなどが大きく出ていて米国の存在の大きさが分かった。トランプ氏就任後の政治ニュースが楽しみになった。

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