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自分の未来を考えるNIEのバックナンバー

津久見市第一中学校1年生

人との出会い、大切さ学ぶ

森貴也さん(左)から作品について説明を受ける1年生

 「新聞記事を読んだ後に直接見る、本人の印象はどうですか?」。永松芳恵主幹教諭が、この日のゲストティーチャーを務める彫刻家、森貴也さん(35)=竹田市=を紹介した。森さんはこの日、1限に1組、2限に2組…と各クラスで授業。1年生4学級の91人が森さんと対面した。
 教材は2012年8月と16年5月に掲載された、森さんの「ひと」の記事。夢や目標を追って活躍する県内の人の生き方を学び、自分の未来を考えてもらおうと、美術と総合的な学習の時間を組み合わせた授業として企画した。授業のタイトルは「祈りの実~未来の夢を考えよう」。
 鉄とステンレスを使った作品を主に手掛けている森さん。酷暑の中での溶接作業など、創作の過程が分かるビデオも流し、自己紹介した。過去の作品を教室に持参。生徒に実際に手に持ってもらい、「意外と重いでしょ?」と問い掛けた。
 生徒から質問を受ける。「作品の鏡面をステンレスで作っているのはなぜ?」「これからどんな作品を作りたいですか?」「作品のアイデアはどうやって思い付くのですか?」といった創作についての質問から「小さい頃の夢は?」「得意なスポーツは?」など柔らかめの質問まで、多くの生徒から手が挙がった。どんな質問にも丁寧に答える森さんに生徒も親しみを増したようだ。
 店員になりたかった幼稚園時代、ノーベル賞を取りたかった小学生時代を経て、人との出会いを通じ、彫刻の道を志した森さん。「きついけど、達成感や周囲の評価を味わいたくて続けている」とやりがいに力を込めた。ここからは生徒が自分の夢を考える時間。色の付いた紙「祈りの紙」にそれぞれ夢を書き入れ、カプセル玩具の容器に入れた。
 1週間後、森さんが再び中学校を訪れた。容器を絵の具と粘土で彩り、授業のタイトルにある「祈りの実」が完成。できた実は学級ごとにツリーにつるし、1年生の夢を詰めた「祈りの木」が完成した。祈りの木は各教室の前に展示し、保護者も観覧。1学期終了後、1年生はそれぞれの実を、大事そうに持ち帰った。

授業の狙い

夢への創造広げさせる

永松芳恵主幹教諭
新聞記事を使って授業をする永松芳恵主幹教諭

 「美術」と「総合的な学習の時間」を連携させた授業を、新聞記事を使うことでやってみたかった。中学1年生は自分自身を振り返り、将来について考える時期。地元のことや大分県のことも考える。世の中とつながるためには、世の中で活躍している人の話を聞くこと。その人の生き方を書いた記事はいい教材になる。生徒自身の夢をつづった祈り紙をカプセル玩具の容器に入れ、粘土と絵の具で自分の未来を表現させた「祈りの実」を集めて「祈りの木」を作り、夢への創造を広げさせることも狙った。
 今回は県内の芸術家、森貴也さんをゲストティーチャーに招き、時期が異なる二つの「ひと」の記事を教材に使った。芸術家という職業がどんなものかも知るいい機会だ。時期ごとの思い、意識の変化を尋ねるなど、生徒からはいい質問も出た。記事はいい授業ツールになった。
 ただ、単に美術の授業で記事を使うだけではなく、学びが生活自体につながるようにしたい。記事を切り口に家族と話したり、将来の進路選択の材料にしたりしてもらいたい。生徒を社会とつながらせることが、記事を授業に使う上での目標。生徒も授業を楽しんでくれたと思う。

生徒の感想

やりたいことのヒント得た中野菜々子さん(13)

 森さんの話から将来について、やりたいことのヒントが得られ楽しかった。美術の授業で鉄を使ったことなどなかったので、興味が湧いた。美術や自然保護などの記事に関心があるので、これから読んでみたい。

武器の形をした作品に驚き後藤俊祐さん(12)

 武器の形をした作品に驚いた。鉄と木だけであんな作品を作れるとは。森さんは実際に会ったら普通っぽい人だったけど、アジアの頂点に立った人ということで、すごい人なんだなあとあらためて感じた。

芸術家のイメージ変わった成松ゆのかさん(13)

 森さんが常に作品のヒントを考えていて、いろんなヒントが作品に詰め込まれていることが分かった。日常のどんな場面でもヒントを得ていて憧れる。芸術家というと内にこもっている人をイメージしていたが、生の姿が分かって楽しめた。

プロ野球選手の夢へ頑張る川村英生(えいしょう)さん(12)

 森さんが先をよく考えて作品を作っているのが分かった。将来の夢をかなえるために今も頑張っているのかなあと思った。自分もプロ野球選手という夢に向かって頑張ろうという気になった。 

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