災害から命守るには
大分市日岡小学校5年1組
災害から命守るには

大分市の日岡小学校区は海抜が低く、大地震による津波浸水を想定したハザードマップでは多くの地域が浸水する。同小5年1組の30人は11月、総合的な学習の時間に自分たちの命を守るための方策を考えた。
授業では、大久保京子教諭が新聞記事のコピーを児童に示した。記事の見出しは「全員避難『15分以内』」。県が策定した「県地震・津波対策アクションプラン」の内容を説明したものだ。大久保教諭が「このプランでは、地震発生から15分以内に全員が避難することを目標にしています」と説明すると、「早い!」と驚きの声。大久保教諭は「早く避難しましょうと呼び掛けているのです」と説明を加えた。
記事の中には南海トラフ巨大地震の減災効果を発生時刻別に示した棒グラフが載っていた。「グラフを見て気付いたことを書き出してください」と大久保教諭。児童は「早く避難した人とそうでない人では重傷者と中等傷者の割合がまったく違う」「冬の午前5時は寝ている人が多いのになぜけが人が多いのだろう」「全ての時間帯でけが人より死者の方が多い」などと気付いたことを発表した。
さらに、臼杵市と佐伯市では住民が避難訓練をするなどして地震発生に備えていることを紹介し、大久保教諭は「日岡の人たちはどうでしょうか?」と投げ掛けた。「早く避難すればけがをする人や亡くなる人が少なくなる。日岡はどうなのか、自分たちの地区のことを調べていこう」とこの日の授業をまとめた。
この後、児童らは市役所や区長を訪ねたり地区を歩くなどして、身近な防災の現状を調べた。また、防災教育の研究を続けている大分大学工学部の小林祐司准教授を招き、校区内を歩いて災害発生時に避難の妨げになりそうな所や危険だと思われるような所をチェック。地図にその場所を書き込んで、自分たちの防災マップを作り上げた。
授業の狙い
地域に目を向ける
大久保京子教諭
日岡小学校区は海抜が低く、巨大地震発生時の津波ハザードマップでは浸水地域に入っている。地域や行政で取り組む災害対策を知り、自分たちができることを考えるのが今回の学習の狙い。
新聞記事を使ったのは、県内では臼杵市や佐伯市で地域の人が避難訓練をして災害への準備や心構えをしていることを知ってほしかったから。他の地域の取り組みを知って自分の地域に目を向けるきっかけにし、防災マップ作りにつなげていきたい。
東日本大震災が発生した時、児童たちはまだ小学生になっておらず、はっきり覚えていない子もいた。授業では震災の映像を見せて、津波がどういうものかを学んだ。子どもたちの学習を通して、行政や地域での防災の取り組みを家庭に広め、備えへの意識を高めていきたい。
児童の感想
しっかり準備しておきたい足立慎太郎君(11)
津波は本当に怖い。しっかり準備しておかなければいけない。津波が来たらどうするのか家族で決めていない。家族で話して避難場所を決めておく必要がある。地区でも防災訓練があったら積極的に参加したい。
みんなに声を掛け逃げたい加来諒洸(あきひろ)君(11)
東日本大震災の時の話を聞いた時、みんな苦しくて悲しい思いをしたんだと知り、怖くなった。避難するときに声を掛け合ったら助かる人が多くなると記事に書いていたので、みんなで一緒に逃げたい。
食べ物などの備えが大切に永野太士(たいし)君(11)
地震はいつ起きるか分からないのが怖い。日頃から食べ物やラジオなどを準備して備えておくのが大切だ。住んでいる地区では避難訓練をしている。参加していればいざというときに役に立ちそう。
日頃から訓練をしなければ平松蒼彩(あおい)さん(11)
もし別府湾で津波が起きたら日岡地区は全て浸水してしまう。日頃から訓練して備えておかなければ。津波が来たら家族と逃げるが、家族と離れているときはどうするか決めていないので避難場所を確認したい。