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書評に挑戦、世界広げるNIEのバックナンバー

朝日中学校3年4組

批評聞き興味抱く本選ぶ

新聞に掲載されている書評を活用し、批評文について学ぶ朝日中学校3年4組の生徒たち

 別府市の朝日中学校では図書館を活用した授業に力を入れている。夏休み直前の7月中旬にあった国語の授業もその一つ。山本典子教諭が黒板に「新聞の書評で拓(ひら)こう―読書の世界」と書き、3年4組の35人が視線を向けた。
 事実、肯定、否定、まとめの流れで書く批評文について学んだ前回の授業を復習し、「みんなには批判ではなく、批評に挑戦してもらいます」と語り掛けた。
 大分合同新聞朝刊の読書欄(毎週日曜日)に掲載された「マラカナンの悲劇」と「住んでみたヨーロッパ 9勝1敗で日本の勝ち」という2冊の本に関する書評を読み、批評が書かれている部分を各自で探した。中学生にとって難しい内容も含まれているが、「だが」や「ただ」などの言葉をヒントに、ほとんどの生徒が見つけ出した。
 山本教諭は「批評の内容を超えて読みたくなるような書評を選んでみてください」と話し、グループ代表の6人が事前に書いてきた書評を発表した。読書体験が少ない生徒は司書のアドバイスを受け、本を選んだ。
 生徒は否定とまとめのみを発表した。長編小説の「指輪物語」を選んだ男子生徒は「後半になるにつれて前半の内容が分からなくなってしまうが、人物像がしっかりと描かれていて引き込まれた」と読書好きらしい書評。ミステリー小説を紹介した女子生徒は「不気味な内容だが、リアルなだけに引き込まれる。いじめについて描かれていて、自分を見つめ直す機会になると思う」などと語った。実体験が垣間見えるような書評に、ほかの生徒も興味を示した様子だった。最後に読みたい本を投票した。
 発表が終わると実際に大分合同新聞朝刊をめくり、さまざまな記事の中から書評を探した。新聞を読む習慣がない生徒が多く、探すことに苦労する様子も見られた。
 書評を探し終えた後、読書欄を担当する文化科学部の高橋直義記者が、編集作業の流れや、本選びで注意している点などを説明。「例えば東日本大震災の前後では、原発に対する捉え方が違う。書評を読み続けると、時代の流れを知ることもできる。みんなも新聞を手に取ってみて」と促した。
 山本教諭は「私たちは書評に出合ってさまざまなことを学ぶことができる。夏休みには大人の読書の世界に出合ってみてください」と授業を締めくくった。

授業の狙い

客観的視点で新しい読書を

山本典子教諭
「書評を通じて読書の世界を広げて」と話す山本典子教諭

 新聞の書評に引かれて興味のなかったジャンルの本を手に取ったり、知らなかった著者と出合ったりした経験のある大人は多い。大人にとって新聞の書評は読書への「窓」とも言えるものだ。
 生徒は1学期に「批評文を書く」という授業で、批評をするためには肯定だけでなく、問題点を挙げる否定的な根拠が大切であることを学んだ。その力を使って二つの記事を参考に、友達が「それでも読みたい」「手に取りたい」と思わせる書評を目指すこととした。
 書評作りを通して客観的に本を読む体験をし、これからの自分の読書計画に対して展望を持つような、新しい読書の仕方を学ぶことができると思う。

生徒の感想

いじめのつらさを伝えた大友よりかさん(15)

 選んだ本はいじめについて書かれた内容で、いじめを受けている人のつらさを伝えたかった。否定的に書くのは難しかったが、みんなにも自分の思いを伝えることができたと思う。

短くまとめるのは難しい今永美咲さん(14)

 プロである作家の作品を批評することや、本の内容を短くまとめるのは難しかった。新聞の書評を書く仕事は大変そうだが、新聞を通して新しい本に出合うことができると思った。

本の良さみんなに伝える中西優太君(15)

 新聞の書評づくりには多くの人が関わっていると思った。文庫本にして9巻の大作を短い文章で紹介するのは難しかったが、本の良さを伝えてみんなにも読んでもらいたかった。

新聞の書評を活用したい前田大輔君(15)

 今まで何となく本を読んでいたが、批評を書くために本を読み返し、深く読むという体験ができた。これからは本を選ぶ時に新聞の書評を活用してみたいと思った。

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