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記事ヒントに解決策探るNIEのバックナンバー

府内学園 高校/専修学校

イルカの追い込み漁に賛否

新聞紙面を使って社会科の勉強をする生徒たち
新聞紙面を使って面接のための講座を受ける受講生たち

 5月下旬、社会科の授業。友成信也教諭がある動画を示した。海上で複数の船がイルカを網に追い込んでいる様子を撮影したものだ。じっと見詰める生徒たちに「和歌山県太地町でやっている漁です。この漁OK? それともNG?」と問い掛けた。
 生徒は付箋紙に考えを書き、黒板に張り付けていく。10人の生徒の意見はOKとNGが半分ずつ。OK側の意見は「人を喜ばせる目的がある」「イルカはだめで、他の生き物は捕まえてもいいというのはおかしい」。一方、NG側は「イルカがかわいそう」「自然界の生き物に人間がこのような形で介入するべきではない」などの意見が挙がった。
 友成教諭はここで、日本動物園水族館協会が追い込み漁のイルカ入手を断念したと伝える記事を配り、問題の解決策を考えさせた。「漁で捕獲する頭数を減らしつつ、平行して繁殖する」「イルカ展示をやめる」などの方法を考えた生徒ら。
 友成教諭は「多種多様な考えがあることが分かりますね。自分が正しいと思っていることにも違う考えがあるということを知ってほしい」とまとめた。


若者の定住促進どうすれば

 「大分県での若者の定住を促進するために取り組みたいことを述べなさい」。昨年度大分県職員初級試験で出題された作文試験のテーマだ。5月下旬、野田幸夫講師が、夏に始まる公務員試験を目指す9人の受講生に解答を考えさせた。
 「医療を充実させる」「駅ビルなど若者が集まる施設や企業の情報を発信する」「観光スポットを宣伝する」。受講生はそれぞれの考えを発表。この発表は面接試験の練習を兼ねており「いろんなこと知らないとしゃべれないよね」と野田講師。
 そこで五つの新聞記事を受講生に示した。県内市町村の創業支援や日田市で就労を望む若者のサポート、県のツーリズム戦略案を紹介したものなどで、いずれも定住促進につながる動きだ。受講生は線を引きながら本文に目を通し、身近な話題が解答のヒントになることを学んだ。
 野田講師は「試験では知らない人の前でも自分の意見をちゃんと言えなければならない。時事問題に対する知識がなければ本番で対応できない」と述べ、試験で出題されるさまざまなテーマに対し、普段から新聞を読んでいろんな情報を仕入れていくことの重要性を強調した。

授業の狙い

自分の考えを表現する練習

友成信也教諭(高校)/野田幸夫講師(専修学校)
友成信也教諭(高校)

 主要なニュースや話題を紹介し、時事問題への興味や関心を持たせている。自分の気持ちを表現するのが苦手な生徒が多いため、新聞記事を読んで感想を書くことが、考えや気持ちを表現する練習にもなる。多様な情報から自分に必要な情報を選び取る力を身に付けるのも狙い。選択した情報を自分で分析し、活用できるようになってほしい。


面接や討論で即答する力を

 昨年度、大分県職員初級試験で出題された作文試験のテーマについて、新聞記事を使って解答を考えたい。公務員試験では、筆記試験の合否が判明してから面接対策をしても遅い。早い時期から面接対策に力を入れている。日常的に新聞を読んでいなければ、面接や集団討論で即座に答えることは難しく、新聞を読む習慣を身に付けさせたい。

生徒の感想

水族館考える機会に島田奈歩さん(18)

 イルカ漁の映像は初めて見た。かわいそうだと思ったが、イルカだけでなく全ての生き物にいえること。このニュースは、イルカを売り物にしている水族館の在り方を考えるいい機会になったのではないか。

世界標準知る大切さ赤峰宙(かなた)君(17)

 新聞に出ている記事は一見自分とは関係なさそうに思えても、読んでみたら関係があったりする。知識の引き出しが増えていくようだ。日本の理論だけでなく、世界のスタンダードを知ることが大切だと思った。

時事問題学び試験へ石橋誠紀さん(19)

 警察官を目指している。面接試験では人間力が問われ、時事問題を知らなければ通用しないと分かった。今以上に新聞に目を通し、試験に臨みたい。そこで得る知識は就職後も必要になると思う。

若者が集まる施設を高橋祐成さん(18)

 定住促進のためには、若者が集まる施設を大分に増やすべき。消防士を目指しており、面接や作文で考えを述べるには新聞を読む必要がある。インターネットでニュースを見ているが新聞も読みたい。

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