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別府大学食物栄養科学部食物栄養学科2年

教養高め、就活の準備にも

大分合同新聞の記事を思い思いに読む学生たち

 「まず皆さんに新聞を読んでもらいます」。4月中旬、別府大学食物栄養学科2年生約40人を前に平川史子准教授が語り掛け、大分合同新聞4月8~10日付朝刊を配った。一部ずつ手に取り、パラパラと紙面をめくる学生たち。思い思いのページで手を止め、紙面を眺めた。
 学生たちはこれから半年間、応用栄養学の一環で成人期・老年期の健康や栄養について学ぶ。この日は初講義。平川准教授は毎講義の初めの20分間を使い、学生に新聞を読む習慣をつけさせようと考えていた。
 平川准教授が板書をした。「食」「健康」「料理」「食品」「食の安全」「流通」「福祉」「子ども」「高齢者」。いずれも学生たちが専攻する学問のキーワードだ。「これを基に、気になる記事を見つけてみて。見つけたら要約を書き、感想を交えて発表してください」。新聞をめくる学生の表情が真剣味を帯びた。
 早速記事を探し、要約を作る。それぞれの視点で見つけた記事の見出しを黒板に書き出していった。「介護 地域の役に」「すしに針 男再逮捕」「買い物の不安解消」「新しい食品表示制度スタート」。全て出そろったところで、平川准教授は「3日間の新聞でもいろんな記事が出ている。これを基に討論会をしてみよう」と提案した。
 4人の学生が壇上で発表。ある男子学生は、9日付朝刊12面に掲載されていた、姫島村で「海アロエ」が商品化されたという記事を選んだ。「商品価値の低い茎の部分に注目した点が面白い」と発表。これを聞いた女子学生は「国東市出身で姫島村は近いが、こんなことが行われているとは知らなかった」。男子学生は「他にもいろいろ開発していると思うので目を向けていきたい」とまとめた。
 講義の終わり、平川准教授は次回からの記事発表の進め方を説明した。家で購読している新聞や図書館の新聞から記事を見つけ、要約を作る。毎講義の初めに教室で記事と要約を発表。それを聞いた学生から感想を出してもらい、討論する―という段取りを示した。
 「就職活動では、人前で自分の意見が言え、人の意見に対してもすぐに応えることが求められる。社会に出れば目上の人と話すことが多くなる。新聞を読んで教養を高めてほしい」と締めくくった。

授業の狙い

最新情報を共有し考え述べる力養う

平川史子准教授
授業をする平川史子准教授

 学生の多くは卒業後、管理栄養士として就職を目指している。新聞には食や健康、流通などに関する記事が載っており、専門として学んでいる学生以上に一般の人はたくさんの情報を知っているんだということを分かってもらいたい。教科書に載っているデータは2、3年前のもの。社会に出たら常に最新の情報を仕入れなくてはならず、新聞を読む習慣が必要になる。管理栄養士として働く際には、ニュースで得た知識を自分なりに整理して使えるようにならなければならない。
 教室で発表する狙いは、学生の間で最新情報を共有し、人前で意見を言う練習をすること。発表を聞く方も、発表を受けて即、自分の考えを述べる練習をしていきたい。就職活動では面接やグループ討論でこのような力が問われる。きちんとした言葉遣いや教養も身に付けてもらいたい。

学生の感想

食に関する記事読みたい高瀬稜太さん(20)

 大学グループの研究で1型糖尿病がウイルスの増殖で発症することが分かった、との記事を選んだ。甘いものが好きで糖尿病の心配をしていたので、記事が目についた。これからも食に関する記事を読んでいきたい。

これからも目を通したい太田彩さん(19)

 女性の月経困難症について説明した記事が大きかったので、目についた。ふだんは新聞をあまり読まないが、ページをめくり自分に関わりがある記事があると感じた。これから目を通してみようと思う。

地方の細かなこと分かる後藤駿和さん(19)

 姫島村で発売された茎ワカメの甘露煮「海アロエ」の記事を紹介した。新聞は、前は文字が多くて嫌だったが、最近は時々目を通す。授業で読んでみて、地方の細部のことまで記事に載っているのがいいなと感じた。

安心して食べる権利ある穴見由貴さん(19)

 食品加工実習が始まるので、中国で病死した豚2千トン余りを売りさばいていたという記事が興味を引いた。消費者には安全な食品を安心して食べる権利がある。企業は安全よりコストを下げることを優先してはいけない。

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