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地域の魅力を伝えるNIEのバックナンバー

大分市滝尾中3年8組

ユニーク“もてなし”集まる

班ごとの発表を見て回る生徒たち=大分市滝尾中学校
考えてきたアイデアを提案

 「今年の夏は大分県挙げての取り組みになります」。大分市滝尾中学校3年8組の教室。社会科を担当する進麻美教諭が生徒たちに語り掛けた。
 JRグループや県内の自治体、団体、企業が総力を挙げて大分県観光の魅力を全国に発信する「デスティネーションキャンペーン(DC)」が7~9月に開かれるニュースが教材だ。「大分市のおもてなしとして何をするのがいいのか。みんなに考えてほしい」。進教諭はDCを伝える新聞記事を示した。
 生徒たちは3~4人ごとに班に分かれ、事前の授業を踏まえて考えてきたアイデアを順に発表した。ある班は中世に南蛮文化と関わりが深かった大分市の歴史を知ってもらうため、南蛮人が身に着けていたマントを着て観光客を出迎えることを提案した。
 ほかに▽大分市の特産物をライブでPRするご当地アイドル「ヒノヒカリ」の結成▽性格は職人肌、得意な料理は卵料理といった細かいプロフィルを定めたゆるキャラ「大分(おおいた)っ市(し)ー」の考案▽有名な関あじ、関さばの釣りを体験し、味わってもらう「食文化ツアー」の企画―など、さまざまな案。生徒たちのユニークなプレゼンテーションに、教室は活気と笑いにあふれた。
 進教諭は「せっかく考えたのだから、どれが実現性が高いかみんなで決めよう」と呼び掛けた。地方は人口減少が課題になっている点を指摘し、「経済効果や集客力があるかどうかも判断材料の一つかな」。エネルギー、経済格差拡大、地球温暖化の問題といったグローバルな観点から「持続可能な社会につながるという要素も大切だね」とも。
 班ごとに票を投じた結果、最多票を獲得したのは「方言でのもてなし」。大分の文化を理解してもらうため、駅のアナウンスに大分弁を取り入れたり、レストランのメニュー表示に「よう焼けちょんで」「カボスは酸っぺえけど健康にいいけん」といった方言を盛り込む―とした。
 「市民なら誰でもできることなので、実現性や継続性がある」「大分を幅広く知ってもらえる」「テレビの全国ネットで発信できれば波及効果がある」といった賛同の声が集まった。
 進教諭は「市民として地域のことを考える“公民”にならないといけません。どうすればよりよく生きていけるのか、考え続けて成長してほしい」と訴えた。

授業の狙い

課題や問題を直視し、解決する方策考える

進麻美教諭
新聞を手に語り掛ける進麻美教諭

 中学3年生は社会科の最後の章で「よりよい社会を目指して」「持続可能な社会を形成するために」、自分たちにできることを考える。現代社会はまさに息つく暇もないほど、考えなければならない課題や問題が山積している。義務教育を終了し、社会に巣立つ生徒たち。未来は自分の手で切り開くものである。そのために自ら目の前にある問題を直視し、解決する方策を持たねばならない。
 大分市に住む生徒たちにとって、これからの地方の在り方は自分たちの将来に大きく関わってくる。そこで地域振興のために7~9月に開催される観光キャンペーンに着目。地方が持続可能な社会であり続けるための方策を考えさせたい。
 大分市を新しい視点で見るため、16世紀の豊後府内の“都市”としてのにぎわいを振り返らせた。よりよい社会を考える市民へと成長する一助としたい。

生徒の感想

住んでるのに知らなかった佐藤温仁(はるひと)君(15)

 自分が住む県のことなのに知らないことが多かった。将来、大分県が進歩するためにどうすればいいかを考えるきっかけになった。せっかくDCの企画があるので、やれることは参加できたらいい。

発表の違いが新しい発見に松本一樹(いつき)君(15)

 同じテーマで話し合ったのに班によって発表が違い、新しい発見になった。自分たちの班は旅館をつくるという大きなテーマでたくさんの人を集めることを考えた。ほかにもいろんなことができると思った。

方言使うのはとてもいい案中山遥香(はるか)さん(15)

 大分市でできるおもてなしは数多いと感じた。方言を使うのは市民なら誰でもできるので、とてもいい案だと思った。市の特産物で定食をつくるアイデアに方言を加えれば宣伝効果があると思った。

大人になった時に使えそう永野帆乃佳さん(15)

 南蛮風の衣装を貸し出したり、みんなから出された多くのアイデアは大人になった時に使えそうな気がした。方言でのおもてなしはさまざまにコラボレーションができて、いろんな可能性を秘めていると思う。

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