NIE

世界は平和と言えるかNIEのバックナンバー

日田市三芳小学校5年1組

内戦、テロ…広く目を向けて

平和について考える三芳小児童たち

 昨年12月中旬、日田市三芳小学校5年1組(21人)の教室であった総合的な学習の時間。塩川美紀教諭は、かつて日本が12月8日に太平洋戦争を始めたことを伝えた後、「その戦争が終わってから、間もなく70年がたちます。長崎や広島の原爆資料館をはじめ、いろんな国でその悲惨な経験が語り継がれています。そこで世界は今、平和なのかを話し合ってみよう」と呼び掛けた。
 ある児童は「平和ではないと思う。殺人や強盗のニュースを見ることが多い」と答えた。「日本は平和だけど、他の国は戦争をしているところもあるから」と意見を述べる児童も。別の児童は「平和だと思う。食べ物に困らないし、学校もある」と考えた。「分からない」と話す児童もいた。
 県NIEアドバイザーも務める塩川教諭は「ここで久しぶりに新聞を使って勉強してみよう」と提案した。示した記事は「なぜ学校にテロ」の主見出しとともに、内戦が続く中東シリアで爆弾テロが相次いでいることを伝えていた。
 「内戦って何ですか。辞書で調べてみよう」と塩川教諭。児童たちは「国の中で戦争すること」と答えた。「『テロ』は暴力に訴えて物事を解決しようとすること」。言葉の意味を学び、世界地図でシリアがどの辺りにあるのかも探した。
 塩川教諭は記事を示しながら、「小学校に通うたくさんの子どもたちやその家族が犠牲になったと伝えています。学校の下校の時間帯が狙われて、犯人が自ら爆弾で爆発するテロがあったようです」と要旨を説明した。シリアでは学校で勉強しながらも、周りで銃や爆撃の音が絶えない現状も伝えた。
 「同じ国の人たちが、意見の違いで戦っている。いろんな意見をみんなで聞いてあげればいいのに、残念ながらそうならず、子どもらの犠牲が増え続けています。これは平和とは言えないね」と児童たちに語り掛けた。
 「みんなは今、友達や家族と限られた地域の中で過ごしています。でも世界に目を向けると、あちこちで戦争があったり、食べ物がなくて子どもたちが亡くなる国もあったり、いろんな事が起きています」と塩川教諭。
 授業の締めくくりに「広く心のアンテナを張り、いろんな見方、考え方に触れながら大人に成長してほしい」と訴えた。

授業の狙い

自分と世の中のつながりを知る

塩川美紀教諭
シリア内戦の記事を伝える塩川美紀教諭

 本年度の5年1組は文字探しといった新聞遊びや4こま漫画、投書欄を読む経験をし、これから記事を読んでみる段階にある。自分たちのことで一喜一憂する年頃だが、世の中に目を向けさせ、世の中とつながっていることに気付かせたいと考え、総合的な学習の時間「平和な世界について考えよう」を組んだ。
 新聞は今を映し出す鏡。「なぜ学校にテロ!」の記事を教材化し、同年代の中学生の投書、家庭での会話などを織り交ぜた。5年生にはやや難しい内容だったが、「平和である」「平和とは言えない」「分からない」と、それぞれが意見を持ち、熱心に話し合いを進めた。
 私のNIEの個人研究は14年目になる。最終的な目標は「次世代のメディアリテラシー(新聞など媒体から必要な情報を得て、使いこなす力)の育成」と位置付け、児童たちの学習スパンを考えている。

児童の感想

いっぱいご飯食べられたら中野貴斗(たかと)君(11)

 日本は平和だけど、他の国は平和じゃないことが分かった。食べ物が食べられなかったりすると、かわいそうだと思う。他の国のことをよく考えながら、みんなご飯はいっぱい食べられたらいいなと思った。

他の国を考えてこなかった鬼武遥太(はるた)君(11)

 今まで他の国のことは思い浮かべずに、日本や自分のことしか考えてこなかった。世の中は平和で大丈夫と思っていたけど、(シリアでは)テロが起きていてびっくりした。どの国も平和になればいいのに。

みんないろんな考えがある松岡雅(みやび)さん(10)

 世界は平和か、そうじゃないのか、みんなにもいろんな考え方があると分かった。世界では戦争やテロがあるから気を付けないといけない。身の回りのことだけでなく、外国のことも考えなくちゃと思った。

日本も平和じゃない部分が高倉美夜(みや)さん(11)

 日本は戦争が終わって年を重ねながら、ずっと平和が続いているけど、物を盗んだり、小さな武器でも人をけがさせたりして平和じゃない部分もある。暴力を振るったり、悪いことは言わないようにしてほしい。

このページの先頭に戻る