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なぜカメルーン?NIEのバックナンバー

日田市津江小学校4年生

交流、国際平和のヒントに

「なぜカメルーンと交流?」。元中津江村長・坂本休さん(写真下)の話を聞く子どもたち

 「中津江村のことが大きく載っているね」。6~7月にあったサッカー・ワールドカップ(W杯)ブラジル大会。松尾正徳教諭(38)が、大会に出場するカメルーン代表を応援するため村が盛り上がっていることを伝える新聞記事を4年生8人に見せた。
 「なぜカメルーンなんだろう。みんなが生まれる前の2002年にあった日韓W杯にきっかけがあります」。松尾教諭はゲストティーチャーとして招いた当時の村長、坂本休さん(83)を紹介した。「詳しくお話を聞いてみよう」
 坂本さんは02年W杯で村がカメルーン代表のキャンプ地に決まったいきさつを語り始めた。国内でキャンプの誘致に手を挙げた地域は80を超えたという。「わたしもアルゼンチン、イタリアなど15カ国の大使館を回り、精いっぱいお願いした」
 すると、他の候補地も視察したカメルーン関係者が村に足を延ばし、度々訪れるようになった。「周囲から『そんな不便な所に来ないよ』とも言われたが、彼らは静かで環境がいいと気に入ってくれた」と経緯を説明した。
 キャンプは5月19日から28日までの10日間の予定で、18日にはいったん「明日入る」と連絡があった。「だがそれきり、待っても、待っても来ない」。到着したのは5日遅れ。それでも代表メンバーを温かく迎え入れた様子は新聞やテレビで大々的に報道された。
 「毎日我慢して歓迎の準備を続ける村民たち、みんなのおじいちゃん、おばあちゃんのことも伝えられた。『あんなに優しい思いやりのある村はない』と」。誇らしげに話す坂本さんは「村を日本で一番有名にしてくれたカメルーンを、今でも応援している」。
 10年の南アフリカ大会に続き、ブラジル大会も飛行機を何度も乗り継いで足を運んだことを報告。ソングら02年当時の中心選手たちと再会した様子を画像で伝えると、児童からは「あー、知ってる」の声も。坂本さんは「これからもカメルーンとの大事な絆を守ってほしい」と呼び掛けた。
 松尾教諭は中津江村の人たちの精神が国際平和へのヒントにもなると指摘。「世界は紛争が絶えないけれど、相手を思いやり、信頼することで仲良くなれるのでは。君たちもいろんな国の人たちと付き合うためにどうすればいいか、考えてほしい」と締めくくった。

授業の狙い

中津江村の精神 地域の誇りも学ぶ

松尾正徳教諭
「思いやりや信頼する心でみんなが仲良くなれる」と松尾正徳教諭

 津江小学校区の一つ日田市中津江村は、村民がサッカー・ワールドカップ(W杯)出場のカメルーン代表をパブリックビューイングで応援するなど、さまざまな取り組みをしている。
 刺激を受けた子どもたちは、W杯の報道について話すことが増えた。さらに世界の国々に関心を向けるようになり、混迷するウクライナ情勢やイラクなどでのテロの報道も話題になった。私たちはカメルーンの人たちと仲良くしているが、どうして他の国同士は仲良くできないのかと、憤りを感じる子もいた。
 そこで、カメルーンと仲良くなるきっかけをつくり、その後もW杯の現地に出向いて応援するなど交流を続けている、元中津江村長の坂本休さんを招いて話してもらう。坂本さんの思いを通して、地域の誇りや他国と付き合っていく上で大切なことは何かについて学ばせたい。

児童の感想

ブラジルの人たちも優しい真田琴音さん(10)

 ブラジルの人たちが(坂本元村長らを)迎えてくれ、優しいと思った。最初は村とカメルーンの縁を知らなかったけど、交流のきっかけを聞いて、すごいなと思った。4年後もカメルーンを応援したいと思った。

温かい、思いやりを持ちたい麻生晃希君(10)

 2002年にぼくはまだ生まれていなかったので、いろいろな話を聞けて勉強になった。中津江村の人たちは何日もカメルーンを待ったけど温かく迎えた。ぼくも将来思いやりを持った人になりたいと思った。

すごい、我慢し待った村の人伊東資泰(よしひろ)君(10)

 ぼくは何か言われたらすぐ言い返したり、けんかをしてしまうけど、我慢して待っていた村の人たちはすごい。自分も我慢強くなりたいと思った。当時を知る坂本さんから直接話を聞けてうれしかった。

スポーツで仲良くなったら石川慧(あきら)君(10)

 中津江村とカメルーンとの交流を知って勉強になった。けんかや争いはあってほしくないから、スポーツで仲良くなったらいいと思う。ぼくはバレーボールをしている。いろんな人と交流できたらうれしい。

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