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燃費競いHV人気NIEのバックナンバー

大分工業高校機械科3年生

開発コスト抑制でも工夫

ミニチュアのモーターのスイッチを入れる生徒(手前)。ハイブリッド車の性能などを学んだ

 「自動車の性能は今、どんな方向に向かっているのか。考えてみよう」。大分工業高校の日永達也教諭(51)が、機械科3年生40人に呼び掛けた。
 「車には何が求められているんだろう」。生徒たちは二酸化炭素(CO2)排出量の増加により温暖化が進んでいることや、化石燃料の枯渇が懸念されている時代背景について学び、「自動車メーカーは環境に優しく、燃料を大切に使う車の開発に力を入れている。使う人の財布にも優しいことになるよね」と語り掛ける日永教諭の話を聞いた。
 燃料1リットル当たりの走行距離を表す燃費を計算し、その良しあしによって支払うガソリン代が随分と違ってくることを確認した。
 燃費が良い乗用車ランキング(2013年)を伝える新聞記事を見ながら、日永教諭が「ベスト10のうち9車種をハイブリッド車(HV)が占めている。ここ数年でより高い性能の車種が開発され、“燃費戦争”が続いているようだ」と解説。同年の車名別新車販売台数に関する記事でも、HVは3車種が上位に食い込んでおり、人気が高いことが分かった。
 HVは二つ以上の動力源を持つ車と定義され、現在販売中の乗用車のほとんどがエンジンとモーターを組み合わせている。生徒がミニチュアのモーターを実際に動かし、駆動(回転)やブレーキ、発電してエネルギーを生む働きがあることを知った。
 「HVはモーターをできる限り使ってエンジンを休ませることで、ガソリンを使わずに高い燃費性能を実現している」と日永教諭。人気を支える要因の一つが環境に優しい車であることを説明した。
 「では、どんな場面でモーターを使うのだろう?」。生徒らは「坂を上る時だと思う」「加速している時」と次々に答えた。
 日永教諭は「動かし始める時はモーターに任せている。乗った人は分かると思うが、スタート時の音は静かだよ」と教えた。メーカーが示す燃費と、実際の燃費が異なることも強調。「アクセルをぐっと踏み込む人と、優しく踏む人では差が出ます。平地か山道か、どこをどれだけ走るかでも変わるね」
 最後に「自動車メーカーは新しい技術の開発でしのぎを削っているけど、販売価格が上がらないよう開発コストを抑える工夫も求められている。努力しているんだ」と締めくくった。

授業の狙い

技術の理解には、広い知識が必要

日永達也教諭
自動車メーカーの企業努力について話す日永達也教諭

 自動車社会では現在、地球温暖化や化石燃料の枯渇などの環境問題に直面している。全く二酸化炭素(CO2)を排出しない、化石燃料もいらない電気自動車が販売されているが、大部分の自動車は少しでも燃費を節約するため、各メーカーとも技術面や価格面でしのぎを削っている。
 2013年の燃費が良い乗用車ランキングではハイブリッド車(HV)と軽自動車が上位を占めた。燃費向上のポイントはエンジンの負担を軽減すること。HVはモーターでアシストし燃費向上を実現している。
 授業では、車の性能や業界の動きを学ばせるほか、アクセル操作や使用状況で燃費が変わることなどを押さえたい。こうした新技術を理解するには従来の原動機の授業の範囲にとらわれず、電気・電子など勉強すべき分野が多岐にわたることも伝えたい。

生徒の感想

無駄なエネルギー使わずに新田優作君(18)

 燃費やモーターの役割をしっかり学べた。授業で学んだことを生かすためにも、社会に出たらなるべく無駄なエネルギーを使わないようにしたい。自然に優しい生活をできるようになりたい。

自動車の開発に携わりたい安部佑紀君(17)

 乗用車のハイブリッド化が進んでいることが分かった。自動車メーカーに就職したいので、授業を通じて機械だけではなく電気の勉強をする必要性を感じた。将来はぜひ車の開発に携わりたい。

電気学ぶことの大切さ実感矢野竜生(たつき)君(17)

 燃費やエコはよく聞く言葉だけど、あまり知らなかった。授業で勉強できていい経験になった。これからの自動車はさらに電気を使うようになっていくと思うので、この分野の勉強が大事になると実感した。

ハイブリッド車も悪くない工藤美祐(みゆ)さん(17)

 モータースポーツが好きで、エンジン搭載のスポーツカーに乗りたいと思っていた。でも燃料代が上がっている中で、経済性を考えると難しいとも思う。ハイブリッドカーに乗るのも悪くないと思った。

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