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外来種の被害防ごうNIEのバックナンバー

安心院高校2年生

駆除、管理の方法を工夫

アライグマ捕獲作戦にみる外来種問題について学ぶ安心院高校2年1、3、4組の生物選択の生徒たち
2年2組の生物選択の生徒たちも同様の授業で解決策を考えた

 「全国的にアライグマの問題が取り沙汰されています」
 2月20日にあった2年1、3、4組(生物選択計33人)合同による生物の授業。深町真由教諭(46)が、大分市一木地区でアライグマを根絶するため、新型わなを使った一斉捕獲の取り組みが始まったことを伝える本紙記事(2月3日付)を配った。
 「本来、北米に生息しているはずのアライグマがどうして大分にいるのでしょう」。生徒たちは「ペットとして飼う人がいるから」「人気が出たから」。1970年代にアニメでブームとなり大量輸入されたものの、気性が荒いため手に負えず、安易に野山に捨てられ各地で増殖、野生化して農作物を食べたり、生態系を壊すなど大きな被害が出ていることを学んだ。
 深町教諭は「もしかしたら、みんなの家の裏山にいるかもしれない」。宇佐での実態調査はこれからだが、侵入していれば国の特別天然記念物のオオサンショウウオも被害に遭う可能性があると指摘。「身近な問題です。危機感を持って」と語り掛けた。
 カミツキガメやアカゲザル、ヒアリ、ブルーギルなど、他地域から人為的に持ち込まれた「外来種」の種類は多く、影響も深刻化。有害な特定外来生物は輸入や飼育、野外に放つことなどが禁じられ、違反した場合には罰則が科せられるとも紹介した。
 その後、生徒3~5人のグループディスカッション。(1)外来種の何が問題か(2)なぜ外来種の移入があるのか(3)どんな解決策があるか―の3点を話し合った。
 最も時間をかけたのが(3)。各グループからは「捕獲して処分」「外来種の輸入を厳しく規制する」「動物のことを知り、責任を持って飼う」などの声が上がった。
 この日は2組(生物選択18人)でも同様の授業をした。グループ発表では「外来種の管理施設をつくる」「ペットショップで誓約書を書いてもらい、きちんと最後まで飼うようにする」「動物園、水族館で飼育する」「(生物に)マイクロチップを付けて放し、巣を見つけて駆除する」といった意見が出た。
 2年生は3月にオオイタサンショウウオを観察する予定。
 深町教諭は「いろんな記事を読んでみて、さまざまなことに関心を広げてほしい」と結んだ。

授業の狙い

世界の「今」に視野を広げて

深町真由教諭
「一人の市民としてこの問題を考えてもらいたい」

 安心院高校は「未来探究科」という授業を設け、3年の1学期で新聞に学ぶ取り組みをしている。進路希望ごとのグループに分かれ、それぞれ興味がある分野の記事を切り抜いて、それを読んで感想を発表し合っている。
 生物の授業では、少しでも新しいことに関心を持ってほしいと考え、新聞記事を教材に活用している。3年生になる前から新聞に興味を持ってくれれば、未来探究科への準備にもなる。
 生徒には大分県内の出来事を通して、世界の「今」にも視野を広げてもらいたい。今回紹介した外来種の問題は世界中で起こっていることであり、解決手段の研究も盛んだ。
 宇佐市は世界農業遺産の認定地域の一つに選ばれた。地元の宝であるオオサンショウウオにも外来種の危険が忍び寄っており、一人の市民としてこの問題を考えてもらいたい。

生徒の感想

数や種類の多さに驚いた松木里流(さとる)君(17)

動物が好きで生物の授業を選択している。ブラックバスなどの外来生物がいることはもともと知っていたが、数や種類がこんなに多いのかと驚いた。きょう学んだことを今後の学習に生かしていきたい。

地元の生き物保護したい矢野里奈さん(17)

アライグマが生態系や農作物に悪影響を与えていることが分かった。私たちの地域には、特別天然記念物のオオサンショウウオがいる。外来種の影響を考えながら、地元の大切な生き物を保護していきたい。

取り返しつかないことに長岡瑛美香(えみか)さん(17)

アライグマは「かわいい人気動物」というイメージがあり、こんなに凶暴とは思わなかった。ペットを飼う時はどんな動物かをちゃんと知ってからじゃないと、取り返しのつかないことになりかねないと思った。

飼う以上は責任を持って石井直樹君(17)

宇佐にはブドウやスッポンなどの特産物が多く、アライグマのような外来種が入ってきたらとても困る。ペットを飼う人は特徴をよく知って飼うか判断し、飼う以上は責任を持って最後まで管理してもらいたい。

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