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女性も働きやすい社会にNIEのバックナンバー

竹田市久住小学校6年生

男女で子育て、協力しよう

若い人がたくさんいるにぎやかな町にするためには何が必要かを勉強する児童

 「おじいちゃん、おばあちゃんにとって暮らしやすい町づくりを考えよう!」。6年の総合的な学習の時間。担任の森澄江教諭(33)は、黒板に授業のテーマを張り出した。
 「これまで、お年寄りに願いや困り事をいろいろ聞いてきました。その中の一つに『若い人が増えてほしい』『子どもの数が増えてほしい』という声がありました。実はこれは久住だけの問題ではありません。今日はこのことを新聞の記事を使って考えていきたいと思います」。そう切り出して、児童に記事を配った。
 記事は厚生労働省の人口推計を検証した論説。県内の人口が2040年には20%以上減り約95万5千人になるとの予測を紹介していた。森教諭は「みんなが42歳になった時の話ですよ」と人口減少が身近な問題であることを強調。記事では、大分県は特に子どもが少なく「女性が仕事と出産の二者択一を迫られる構造を変えなければならない」とする識者の声を紹介していた。
 ここで森教諭は、働く女性の割合を年齢別に比べることができる統計資料を配布。「何か気付くことは」と問い掛けた。児童は「20代と40代の女の人は働いている人が多い」「でも、30代はあまり働いていない」。その理由を考え「出産や子育てが忙しいので仕事ができないからだと思います」と発表した。
 資料には、日本だけでなく海外の状況も載っていた。他国では30代の子育て世代もたくさん働いていることを知った児童は「出産しても女性が働きやすいのでは」と推測。各国で男女の育児に携わる時間がどのくらい違うかも比べ「日本は男性が家事や育児をする時間が短い」と気付いた。
 森教諭は「日本の男の人は仕事が忙しすぎるという面もあります」と説明。その一方で、仕事をしながら育児を頑張る男性「イクメン」を紹介する新聞記事を紹介した。
 内容は県内の4人のイクメンパパによる座談会。「料理をたまにしますよ」「自分の時間を持ちたいときもありますが、子どもと触れ合うと元気をもらえます」。子育ての楽しさや、やりがい、大変さが生の声でつづられていた。
 森教諭は「こういうお父さんもいます。みんなもこれから大人になります。家庭を持ちたいと思ったとき、互いを思いやる気持ちを大事にしてほしいと思います」。子どもたちは授業を通して、将来の自分、将来の久住の姿を少し思い描けたようだった。

授業の狙い

若者が地元に定住するには

森澄江教諭
「男女が協力して生きていく大切さを理解してもらいたい」と話す森澄江教諭

 子どもたちは総合的な学習の中で、久住のお年寄りたちが、どのような町になってほしいと望んでいるかを調べてきた。お年寄りからは「買い物ができる場所が欲しい」「近所に大きな病院があれば」といったハード面の整備を望む声のほか「もっと子どもがたくさんいる町になってほしい」という願いが多く聞かれた。
 授業は、久住に若い人が住み、子どもが増えるためには何が必要かを考える時間にしたい。若者の定住策や少子化対策にはさまざまなアプローチがあるが、今回は特に家事や育児の面をクローズアップする。
 子どもたちには、安心して出産、子育てをするためには、家庭や地域の協力が不可欠だと気付いてもらうと同時に、男女が互いに助け合い、協力し合って生きていく大切さを理解してもらいたい。小学校の卒業を前に、将来の自分の生き方を考えるきっかけになればと思う。

児童の感想

将来、家事を手伝う大人に出雲遼太君(12)

男の人が育児に手が回らず、女の人は仕事をするか、出産・育児をするかの二者択一を迫られているのが課題だと感じた。自分も将来は、休みの日にできる限り家事を手伝うような大人になろうと思った。

大分の人口減が分かった工藤鈴花(れいか)さん(12)

新聞記事には難しくて意味が分からない言葉もあったけど、じっくりと読むと、大分の人口がどんどん減っていることが理解できた。家でも新聞を購読しているので、これからは少しずつ読んでみたい。

お父さんも育児頑張って仲元寺葵さん(12)

日本のお父さんに比べて、外国のお父さんは結構、家事や育児をしていることが分かった。仕事が大変だったりするんだと思うけど、もうちょっと頑張ってもらえるとお母さんが楽に子育てができると思う。

“イクメン”を勉強できた中山進君(12)

子どもが少なくなり、人口が減っていることに危機感を持った。このまま、もっと減ると、久住はどんどん寂しい街になってしまう。そんな中で子育てに頑張る「イクメン」がいることを新聞記事で勉強できた。

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