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身近に潜む震災、実感NIEのバックナンバー

大分市城南中学校3年1組

正しい対応で被害少なく

新聞を使って防災について学ぶ生徒たち

 「今日の授業は新聞を使って勉強します」。3年1組の社会科の時間。担任の甲斐正憲教諭(38)が『防災について考えてみよう!』のタイトルを黒板に張った。
 39人の生徒は、まずはワークシートに知っている災害を書き出す作業をした。甲斐教諭が「では、発表してください」と呼び掛けると、生徒は次々と挙手。「地震」「台風」「竜巻」「火山」「津波」「隕石(いんせき)」と思い付いた災害を発表した。この日は東日本大震災でその恐ろしさを見せつけられた「地震」と「津波」を中心に考えることになった。
 ここで昨年9月1日の「防災の日」の新聞記事が配られた。記事は日本列島南側の海底にある南海トラフで定期的に地震が起きていることを指摘。万一、巨大地震が起きれば大分にも大津波の危険性があることを伝えていた。さらに、別府湾を震源とした活断層型の地震では最大震度7の揺れが県都を襲うとの想定も。
 「震度7ってどんな揺れかイメージできますか?」。甲斐教諭は気象庁の震度階級の図を示し、階級ごとの揺れを説明した。震度6弱は「立っていることが困難」、震度6強は「はわないと動けない」、震度7では「耐震性の高い木造建物でもまれに傾く」―。
 別府湾を震源とした地震では短時間で津波が到達することもあり、想定される死者数は最大で3万6千人以上。「それぐらいの被害が出る可能性があることを知っておいてほしいんです」。生徒は身近に潜む危険性をあらためて実感したようだった。
 地震列島と呼ばれる日本。甲斐教諭は「将来、大分にいても、どこかに引っ越しても、地震とは付き合わなければいけません」と念押し。生徒は班になって地震にどう対応するべきかを話し合った。
 「揺れたら机の下に隠れる」「高い所に逃げる」「まずは冷静になること」。今できる対策も考えた。「食料を備蓄しておく」「家族で逃げる場所を決めておく」「そもそも、この辺りは、どこに逃げたら安全だろう?」。いつ起きるか分からない災害を想定しながら、生徒は活発に意見を交わした。
 甲斐教諭は「災害の発生を人間の力で止めることは難しい。でも、しっかりと対応して被害を少なくすることはできます。正しい知識を得て、正しい対応を学ぶことが大事です」と締めくくった。

授業の狙い

南海トラフなど想定し意識向上

甲斐正憲教諭
「防災の意識や知識は、時間がたっても必要なもの」と話す甲斐正憲教諭

 自然災害はいつ襲ってくるか分からず、また誰の身にも起こり得る。しかし、日頃はそのことを意識することはあまりない。
 国内は南海トラフを震源とした地震をはじめ大きな地震の発生が予想されている。県内では、多数存在する活断層による地震も想定されている。東日本大震災で子どもたちが率先して避難し、多くの人命が助かった「釜石の奇跡」のように、災害時はどんな行動を取るかが重要になる。
 そこで、南海トラフや別府湾を震源とした地震の規模などに触れ、そのときにどのように行動すれば良いか、また日頃から緊急時に備えてどのような準備が必要かなどを考えさせ、防災意識を高めていきたい。
 防災に対する意識や知識は、生徒にとってこれから大分を離れても、時間がたっても必要なものであると考え、この授業を設定した。

生徒の感想

「最大震度7」の予想に驚き山村蒼君(15)

別府湾を震源とした地震では、大分市でも最大震度7が予想されていると知り驚いた。きっと想像以上の揺れだと思う。新聞記事は実際に読んでみると、とても分かりやすくて、ためになった。

豪雨や土砂崩れも学びたい利光沙菜さん(15)

災害時は冷静に行動しなくてはならない。そのためにも、災害について知ることが必要だと感じた。地震や津波だけでなく、豪雨災害や土砂崩れなどについてももっと深く学びたい。

家族で話し合いを進めたい村上綾香さん(15)

災害はどこかひとごとのように感じていた。授業を受けて大分でも災害の危険性があることが分かった。東日本大震災後、家族と災害時の集合場所を決めたが、再び家族で話し合い食料の備蓄なども進めたい。

津波を察知し避難心掛ける楠野裕也君(15)

(県内に大津波をもたらす危険性がある)南海トラフ巨大地震は、とても大きな規模だと実感できた。万一、そんな地震が起きた場合は、想定を信じず、できる限り高台に逃げるよう心掛けたい。

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