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伝統の祭りを守ろうNIEのバックナンバー

大分市鶴崎小学校5年1、2組

盛り上げるアイデア発表

授業を受ける児童たち
ゲストティーチャーの野村広幸さん

 「剣(けん)八幡宮のけんか祭りに行ったことある人?」。大分市鶴崎小学校5年1組、2組(56人)の総合学習の時間。地元鶴崎地区で毎年4月にある剣八幡宮春季大祭について本松健一教諭(40)が問い掛けると、「はーい」「毎年おはやしで出てるよ」と3分の1ほどの子どもが手を挙げた。
 「知らない人も多いんだね。まずはどんな祭りなのか見てみよう」と、祭りの映像を観賞した。地区ごとの山車を激しくぶつけ合う通称「けんか祭り」の様子に、子どもたちは「激しいなあ」「危ない!」と興味津々の様子。
 続けて本松教諭が新聞記事とワークシートを配り「記事を読んで、祭りの歴史や課題を読み取ろう」と呼び掛けた。記事を読み進め、昔は祭りの当日、午後は小学校が休みになるほど盛り上がっていたこと、現在は担ぎ手不足で山車が減っていることなどを知った。「どうすればまた盛り上げることができるかな」と質問を投げ掛けた。
 「友達や家族を誘って参加する」「テレビで祭りの面白さを宣伝する」「商店街の人に協力してもらう」「参加する地区を広げる」…と、子どもたちは思い思いのアイデアを発表。本松教諭は「地区の中での努力、他の地区へ広げる努力、新聞やテレビなどでアピールする努力などに分けられるね」と分類した。
 ここで、ゲストティーチャーとして祭り実行委員会の野村広幸前委員長(75)が登場。鶴崎の国宗地区出身の野村さんは、長年祭りに携わってきた経験や祭りの起源、歴史を分かりやすく解説した。
 剣八幡宮は1645年、宇佐神宮の神剣が見つかった場所に建てられて祭りが始まったという。昔の祭りのにぎわいぶりなどを聞き、子どもたちは祭りに長い歴史があることを学んだ。
 野村さんは「私の小さいころは子どもがたくさんいたが、今は若い人が少なくなり山車の担ぎ手が足りない」と地域の変化を説明。その上で「子どもみこしがあるので、ぜひ皆さんも参加してほしい。私たち地元の人間が地域を盛り上げていかないと歴史が廃れてしまう」との訴えに、全員が静かに耳を傾けていた。
 本松教諭は「地元の祭りについて詳しく知ることができたね。これからけんか祭りを発展させるために、自分に何ができるか考えてほしい」と結んだ。

授業の狙い

身近な問題知り地域と関わって

本松健一教諭
「自分たちにできることを考えよう」と話す本松健一教諭

 鶴崎地区に古くから伝わる剣八幡宮の春季大祭「けんか祭り」について学ぶ。祭りの映像を見せて、行ったことのない子どもにも興味を持たせると同時に、新聞記事を読んで昔の様子や現在の課題を読み取る。
 ゲストティーチャーの話から、伝統の祭りを守ることの大切さや山車の担ぎ手不足による規模の縮小といった課題を理解する。祭りの歴史を絶やさず今後も盛り上げていくにはどうすればいいのか、自分たちにできることを考える。
 アイデアを自由に発表し、どういった取り組みができるか、仲間の意見を聞きながら考えをまとめる。地区内での努力、他の地域に広げる努力、行政やマスコミを利用してPRする努力など、多様なアプローチ法があることに気付かせる。地元の祭りについて知り、身近な問題として意識することで、地域と積極的に関わるきっかけにしたい。

児童の感想

人が来るよう工夫する藤本淳也君(11)

けんか祭りでは、近所のおじさんが山車に乗ったり担いだりしていて格好いい。僕も毎年参加して太鼓をたたくなどしているが、今は担ぎ手が少ないと聞いてがっかりした。多くの人が来るように工夫したい。

山車の違い新聞で知る三浦桜さん(10)

私の生まれた鶴崎地区は歴史や自然があっていいところ。ほかの地区の人にも知ってもらいたい。けんか祭りの詳しい歴史や地区ごとの山車の違いを、新聞記事や野村さんの話で知ることができてよかった。

400年続いていて驚き深田光留(ひかる)君(10)

けんか祭りには一度も行ったことがなく、400年の歴史があることも知らなかったので驚いた。親せきや友達、近所の人をたくさん呼んで、一緒に参加したら担ぎ手も増えるのではないかと思った。

おはやしの太鼓楽しい野地綺子那(きずな)さん(11)

けんか祭りでおはやしの太鼓をたたいている。とても楽しいので、多くの人に参加してもらって危機から救ってほしいと思う。鶴崎地区には鶴崎踊や清正公二十三夜祭もある。歴史が豊かな自慢の町です。

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