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新聞で語彙力アップNIEのバックナンバー

別府溝部学園高校食物科3年生

日本語の乱れを指摘

授業を受ける食物科の3年生=別府市の別府溝部学園高校

 別府溝部学園高校食物科3年生26人の「国語表現」の授業。担任で国語科の佐藤有希教諭(33)が若者の日本語の乱れを指摘する大分合同新聞コラム「東西南北」(2012年2月27日付)を配った。読み始めた生徒たちは日常生活やアルバイトでの経験を思い浮かべたのか、大きくうなずいていた。
 「言葉は時代とともに変化するもの。ただ最近は一つ一つの単語が持つ意味が幅広くなっています」と佐藤教諭。コラムにある「ヤバイ」という言葉を用いた五つの例文を生徒たちに示し、意味の違いについて考えさせた。(1)「このステーキ、ヤバイ! もっと食べたい」(2)「このステーキ、ヤバイ! もう食べたくない」―。(1)は肯定的な意味(2)は否定的な意味―との答えが返ってきた。
 そこで佐藤教諭は「ヤバイ」を別の言葉に置き換えるように指示した。すると、(1)は「おいしい」「大きい」。(2)は「おいしくない」「油っぽい」などが挙がり、一つの言葉に多様な意味を持たせて使っていることを実感させた。
 佐藤教諭は「いつも一つの単語で済ませていると使いこなせる言葉が減り、微妙なニュアンスの違いに気付くことができなくなってしまう」と説明。「正しく使える言葉の数を増やすことは、他者とのコミュニケーションを円滑にすることにもつながります」と続けた。
 「言葉の数を増やすのに有効なのが新聞です」。佐藤教諭は生徒たちに過去の大分合同新聞を配布。実際に読んでもらい、これから覚えたい、使ってみたいと思う言葉を抜き出させた。新聞を読み慣れていない生徒が多いことを踏まえて、「コラムや記事のリード部分だけでも読む習慣を付けると、新聞が身近になる」などとアドバイスした。
 授業の終盤には、同校の就職支援員を務める会田賢二さんがゲストティーチャーとして登場した。会田さんは社会人に必要な素養としてコミュニケーション能力を挙げ、「言葉を尽くしていかに相手に自分の考えや思いを伝えられるかが、社会人として通用するか否かの分かれ目になる」と強調。「語彙(ごい)力を高めることは自分を助けることにもなる。新聞を活用してたくさんの言葉を自分のものにしていってほしい」と呼び掛けた。

授業の狙い

適切な言葉遣いできるように

佐藤有希教諭
「職業人、社会人として正しい日本語を使うことの重要性に気付いてほしい」

 3年生は卒業後、進学、就職とそれぞれの道を歩んでいく。どんな進路を選ぼうともコミュニケーション能力は必須であり、一人一人の国語の能力を高めることが大切である。
 「国語表現」の授業は、高校3年間の国語科の集大成。実社会で活用できる国語の能力を確実に育成するとともに、話したり書いたりすることへの意欲を高め、国語力を磨き続ける姿勢を育む教科である。
 今回の授業は、言葉の移り変わりや日本語の乱れを意識させる機会にしたかった。職業人、社会人として正しい日本語を使うことの重要性に気付かせ、相手や場に応じた適切な言葉遣いができるようになることを目指した。
 その際に語彙(ごい)力を高める必要があることにも触れ、手段の一つとして新聞記事が有効であることを知らせるようにした。

生徒の感想

正しい言葉を使いたい新本明花(しんもとはるか)さん(18)

普段何げなく使っている「言葉」について、あらためて考える良い機会になった。これまであまり新聞を読んでこなかったので、少しずつでも読むようにし、正しい言葉を使えるようにしたい。

将来のため敬語を勉強角田(つのだ)敬祐君(18)

和食の板前になるのが夢。料理の腕前だけでなく、きちんとした正しい日本語を使える板前の方が、お客さんからも信頼してもらえると思う。将来を見据え、特に敬語を勉強していきたい。

人と関わりながら学ぶ中嶋つかささん(18)

レジ打ちのアルバイトをしているが、私もついつい不正確な日本語で接客してしまっている。人とコミュニケーションを取るのが好きなので、これからも人と関わりながら、新しいことを学んでいきたい。

美しい日本語が大好き申性湜(シンソンシク)君(17)

日本語は難しいが、韓国語にはない特有の美しい響きがあって大好きだ。韓国でも言葉の乱れが話題になることがある。韓国の大学に進学する予定なので、正しい言葉を使うように心掛ける。

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