NIE

平和は何からうまれる?NIEのバックナンバー

竹田南部中学校3年生

たくさんの“種”に気付く

平和について書き上げた意見文を発表する生徒たち

 68年前―。太平洋戦争末期の沖縄で繰り広げられた地上戦は、日米双方で20万人以上が犠牲となったとされる。沖縄戦の戦没者を悼む「慰霊の日」の6月23日、沖縄県糸満市であった沖縄全戦没者追悼式で小学1年の男児が「平和の詩」を読み上げた。3年生の25人は、追悼式と詩について書かれた新聞記事を読み、国語の授業に臨んだ。
 『へいわっていいね。へいわってうれしいね。みんなのこころから、へいわがうまれるんだね』とつづった詩。佐藤美登里教諭(53)は「小学生の男の子は『平和は心からうまれる』と考えました。中学3年生のみんなは、平和は何からうまれると考えますか」。そう投げ掛けた。
 生徒はまず班に分かれて互いに意見交換。友達の意見も参考に、それぞれの思いを訴える意見文作りに挑戦した。意見文は「平和は○○○からうまれる」を穴埋めし、その理由を「なぜなら…」と続けて説明する形式。佐藤教諭は、真剣な表情でペンを走らせる生徒の間を歩きながら「これまでの平和学習でどんなことを考えた?」と、時折アドバイス。教室はペンの音が響く少し静かな時間が流れた。
 教室内の掲示コーナーには、これまでの平和学習の“足跡”が展示されていた。その一つが「平和の木」。一日に乾パン5個で戦い続けた戦争体験者の講話、若い特攻隊員の遺書に触れた教育合宿…。そうした学習を通して生徒が育んだ平和への思いが、「木の葉」に見立てた小さな緑色の紙に『戦争はいけない』『平和で幸せ』と書き込まれ、ツリー状に飾られていた。
 平和学習と新聞記事から生徒は「平和が何からうまれる」と考えたのか。それぞれが書き上げた意見文を発表した。
 ある生徒は「戦争の悲惨さを知っていれば、二度と戦争は起きない」として「知ること」から、平和がうまれるとした。別の生徒は、そのために「語り継ぐこと」が大事と主張。戦争を体験した世代が少なくなっても「次に、また次に、永遠に語り継ぐ」ことが平和につながると訴えた。
 「一人一人の意識」「自分の強い意志」「他人への愛情」「笑顔」「楽しいと思える日常」―。生徒は次々に発表。それぞれの考えを聞きながら、身の回りにも、心の中にも、平和をうむ“種”は、たくさんあることに、あらためて気付いた様子だった。

授業の狙い

悲惨な体験知り、考えより深めて

佐藤美登里教諭
「平和のために何ができるのか、より深く考えて」と話す佐藤美登里教諭

 生徒はこれまで、隣接校区にある戦争遺跡「殉空之碑」でのフィールドワークや戦争体験者への取材、劇化などを通して戦争による悲惨な出来事の数々を学んできた。
 1、2年の時は、新聞コラムを読み解く「朝NIE」で平和について学習。3年になってからは、6月に戦争体験者の講話を聞き、7月に教育合宿で鹿児島県の知覧特攻平和会館を訪問した。こうした学習を通して、戦時中に生きた若者や、彼らを見守った人々の思いを想像し、自分たちの生き方を振り返ってきた。
 今回の授業では、6月に沖縄県で開かれた沖縄全戦没者追悼式で、小学生が朗読した「平和の詩」について書かれた新聞記事を取り上げる。これまでの学習や体験を重ね合わせた上で、自分たちが今、平和のために何ができるのか、より深く考えさせたい。

生徒の感想

何でも話せる関係が必要井晴暉君(15)

平和について深く考えることができた。友達とけんかしないためには、何でも話せる友人関係になることが必要だと思う。国同士の関係もそうなっていけば、戦争がなくなるのではないか。

絶対に戦争しない思いを阿南未佑さん(14)

(太平洋戦争末期の)沖縄戦で、多くの人が亡くなったことを新聞で知り、胸が痛かった。一人一人が絶対に戦争をしないという思いを持つことが必要だと感じた。自分もそのことをしっかりと胸にとどめたい。

みんな全体のこと考えて波多野直樹君(14)

記事で紹介されていた小学生の「平和の詩」を読んで、本当に深く考えられた詩ですごいと思った。本当の平和とは一部ではなく、みんなが幸せになること。みんなが全体のことを考えれば戦争はなくなる。

語り継いでいくこと大切甲高七奈さん(14)

戦争について語り継いでいくことが必要だと感じた。普段は戦争について語ることはなかなかないが、8月は新聞やテレビなどで取り上げられることが多いので、家族の間でも話題にしてみたい。

このページの先頭に戻る