全国学力テスト 結果分析
文部科学省が31日に公表した2021年度全国学力テストの結果を、小中学校の教科別に分析した内容は次の通り。
●中学校・国語/敬語の使い方が不十分
平均正答率は64・9%。登場人物の言動や文章の内容はよく理解できていたが、条件に合わせて自分の考えを記すことや敬語を使う力が不十分だった。
夏目漱石の「吾輩は猫である」の一節を取り上げた出題では、「黒」の機嫌を取るために掛けた言葉が、反対の結果をもたらしたと分かる様子を文章から抜き出すよう求めた。71・5%が「すこぶるおこったようすで背中の毛を逆立てている」などと記し、正答した。
ただ、「吾輩」が「黒」をどう評価し、接しているか、文章中の表現を引用した上、自分の考えを含め記述させた設問の正答率は20・8%と低迷。引用がない答案が4割、無解答も2割あった。
生徒から焼き物館の担当者へのメール問い合わせを想定し、「行く」を適切な敬語に直して、その種類を答える設問でも「伺う」「参る」「お訪ねする」などと記述し、「謙譲語」を選んだのは40・9%にとどまった。
●中学校・数学/図形問題の正答率低く
全体の平均正答率は57・5%。図形分野の問題で正答率の低さが目立った。全16問中5問あった記述式問題の正答率も低調で、大半の問題の正答率が平均を下回った。
2枚の三角定規を組み合わせて作った四角形が平行四辺形となる条件を記述させる問題の正答率は44・6%。ある条件下でいつでも成立する図形の性質を見いだして短答式で答える問題では29・3%にとどまった。
基本的な整式の加法・減法を計算したり一元一次方程式をつくったりする短答式問題の正答率は、いずれも70%を超えていた。
「日照時間が6時間以上の日は6時間未満の日より気温差が大きい傾向がある」と主張できる理由をグラフの特徴を基に数学的に記述する問題の正答率は11・2%で、全問題中で最低だった。
相対度数の必要性と意味を理解しているかどうかを問う選択式問題も37・1%にとどまった。
●小学校・算数/面積求める 問題で低調
全体の平均正答率は70・3%。選択式問題では76・2%、短答式問題では75・9%と平均を上回ったが、記述式問題では53・2%と低かった。新学習指導要領が重視するデータの活用に関する問題でも一部に課題が見られた。
学校図書室における学年ごとの本の貸出冊数を棒グラフから読み取らせる基本的問題は90・8%が正答。図書館で本をあまり借りない理由に関する5、6年生へのアンケート結果を反映した帯グラフから複数のデータを比較し、特徴ある項目とその割合を記述させる問題は52・2%だった。
直角三角形の面積を求める短答式問題では55・4%、複数の三角形を組み合わせてできた平行四辺形の面積の求め方を記述させる問題でも46・2%と低調だった。
出題内容は、日常的な場面を想定した問題が中心となった。時計を使って条件に合う時刻を求める短答式の正答率は89・3%と高かった。
●小学校・国語/記述で不明確な答案も
平均正答率は64・9%だった。語句の使い方などはよく身に付いていたが、目的に応じて情報を見つけながら読んだり、理由を明確にして考えを書いたりする力に課題が見えた。
さまざまな製品の留め具として使われるファスナーを巡り、発明の経緯や現在の使われ方について取り上げた文章を題材にした出題で、文章中と同じ「より」の使い方を選ぶ設問は正答率87・6%に上った。一方、発明のヒントになった出来事や仕組みを文章や資料から見つけ、50~80字でまとめる出題の正答率は34・6%にとどまった。
学校での片付けをテーマに作文をすると想定し「掃除担当の人などが片付ければよい」という考えに反対であることと、その理由などを60~100字で記述させる出題の正答率は56・7%。必ず盛り込むよう指示された言葉や文が入っていなかったり、意見と理由のつながりが明確でなかったりする答案が目についた。
(問題の読解力不足)
奈良学園大の吉田明史教授(数学教育)の話 算数・数学では、基本的な計算力や知識を問う問題の正答率は高かった。小学校では、割り算の意味の理解が浅いために「単位量当たりの大きさ」の問題で課題が見られた。中学校では記述式問題で無解答の割合が高く、問題文の読解力や数学的に説明する力の不足がうかがえる。
(条件に沿う文章を)
東京学芸大の中村和弘教授(国語教育学)の話 スピーチ、メール作成といった日常生活の場面を想定し、バランス良く国語の力を問う問題が出ていた。文章の構成を把握したり、語句の使い方を理解したりする問題は正答率が高く、普段の指導が、よく身に付いていることがうかがえた。独りよがりにならず、条件に沿って書く力を付けるという課題が明確になった。
※【全国学力テスト】
正式名称は「全国学力・学習状況調査」。児童生徒の学力を把握して学校現場の指導改善につなげることを目的に2007年度に始まり、小6と中3の全員が対象。国語と算数・数学の2教科が基本で、3年に1度は小中とも理科が加わり、中3は英語を同程度の頻度で実施する。学習意欲や生活習慣などを尋ねる質問調査もしている。